サツゲキにて鑑賞。
『辰巳』
小路紘史監督作品。
遠藤雄弥主演。森田想、後藤剛範、佐藤五郎、倉本朋幸、龜田七海、藤原季節出演。
モラルも仁義もへったくれない底辺に生きるアウトローを描いた、
壮絶なジャパニーズノワール。
半グレ集団で絶望と共に生きている辰巳(遠藤)は、
集団が殺した死体処理などを請け負っている。
知り合いの自動車工場で働く怖いもの知らずの不良娘の葵(森田)は、
集団に姉を殺され復讐の闇に身を投じていく。
辰巳は無関係を装いながらも、
そんな葵の行動に身を寄せていき…
終始暴力描写に満ちた壮絶な作品。
大半が、殴り合い首を締め合う者たちのアップの映像。
ここまで徹底したノワール作品は、
日本映画を逸脱し韓国映画を飛び越え、
メキシコあたりの無秩序な暴力映画を連想させる。
日本のヤクザ映画でもこのような作品はなかった。
「仁義なき戦い」などは当然、
身内だろうが兄貴だろうが関係ない。
登場人物は狂った連中ばかり。
主人公の辰巳は覚醒剤の密売がらみで弟(藤原)を失った過去を持ち、
虚無的に生きている。
そんな中周囲に徹底的に歯向かう葵に対し、
辰巳は心の底の微かな侠気を見せるあたりが見事である。
小路紘史監督の以前作は8年前のやはり壮絶な暴力を描いた傑作『ケンとカズ』。
両作品とも、タイトルが主人公の名前である。
前作の主演の二人はカトウシンスケと毎熊克哉であり、
その時は名前も知らなかったが、
その後大きな活躍を見せている。
その弟分を演じた藤原季節が出番が少ないながらも本作にも登場。
本作の主役を演じた遠藤雄弥とヒロインの森田想にも、
今後の活躍を期待したい。
そんな熱くもクールな作品だったが、
終盤の展開には少々疑問も。
あんなに簡単に殺せますかねえ。
7点。