ミュージック・マガジン増刊

『イエロー・マジック・オーケストラ 音楽の未来を奏でる革命』

 

 

2023年9月発行の雑誌でしばらく積読していた。

イエロー・マジック・オーケストラ(以下YMO)は1978年の結成以来、

爆発的なテクノポップ・ブームを巻き起こし、

何度かの解散(散会)や活動停止を繰り返しながらも、

3人のメンバーは流動的に交流を重ねてきた。

 

しかし3人のメンバーのうち、

高橋幸宏氏と坂本龍一氏が昨年相次いで死去。

 

3人が顔を合わせることが永遠になくなった時点で、

この増刊号が創刊されたわけである。

 

ミュージック・マガジン増刊とあるが、

姉妹誌のレコード・コレクターズの、

両雑誌に今まで掲載されたYMO特集の記事を編集したものである。

 

内容は、インタビューやミュージシャンストーリーといった内容は少なく、

音楽そのものの論評、

特に作品に対するレビューに多くのページが割かれている

 

これは本誌の編集方針というより、

過去の特集の内容がそうだったためであり、

結果的にYMOらしさが浮き彫りに出たと思う。

 

言ってしまえば、

読み物としてよりも資料集としての価値が高い一冊となった。

 

個人的な思いを書くと、

YMOのファーストアルバムを初めて聴いた時、

その斬新な音楽に一気に魅了された。

初期の数枚のアルバムは所有して、

札幌厚生年金会館でのライブにも参戦。

 

YMOの活動が徐々に拡散するに連れてそれほど熱心に聴かなくなって行ったが、

メンバー個々の活動は自然と耳に入っていった。

また彼らに影響を受けた音楽をどれだけ聴いたものだろうか?

 

そして本誌で圧巻だったのが、

YMOのみならず、

周辺のミュージシャンによる作品もレビューの対象になっていることである。

 

その顔ぶれの錚々たること…

メンバーのソロ作品のほか、矢野顕子、加藤和彦、大貫妙子、シーナ&ロケッツといったおなじみの面々から、

星野源、ピチカートファイヴ、森高千里などなど。

 

例によって、名前が知っているが聴いたことのなかった作品のなんと多いことか。

Spotifyでチェックしまくってみたのだか、

けっこう未配信のアルバムが多いのには残念。

 

その中で、意外にも聴いていなかった意外な傑作が見つかったので、

後日レビューする予定。

 

ちなみに本誌で最も古い記事が、

ニューミュージック・マガジン(当時はそういうタイトルだった)1978年10月号に掲載された、

北中正和によるインタビュー記事「機会がうたう明日(?)の歌」

 

 

まだテクノポップという言葉すら無かった時代

その音楽が評価されるのは、これからだ。

YMOの音楽をどう表現して良いのか、

手探り感を感じさせる歴史的な記事だった。

 

本誌の中で、読み物ととして最も貴重な一編だったと思う。