シアターキノにて鑑賞。

 

『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』

井上淳一監督作品。井浦新、東出昌大、芋生悠、杉田雷麟、コムアイ、田中麗奈、竹中直人出演。

 

 

映画監督若松孝二が名古屋に自前の映画館シネマスコーレをたちあげた頃のエピソードを描いた作品

若松プロの黎明期を描いた『止められるか、俺たちを』の続編でもある。

前作と同様、若松孝二役を井浦新が演じている。

 

 

若松がシネマ・スコーレを立ち上げるにあたり、

元文芸坐勤務でビデオカメラのセールスマンをしている木全純治(東出)を支配人に任命する。

シネマスコーレには金本法子(芋生)がバイトとして勤務する。

彼女は学生時代に自主映画制作を目指しながらも1本も撮れない挫折を感じていた。

そんな映画館に映画監督を目指す予備校生井上淳一(杉田)が訪れ、

若松孝二に弟子入りを申し入れる。

 

 

以上の4人がほぼ同等の主役と言って良い。

特に予備校生役は若い頃の井上監督がモデルになっている。

4人のうち、金本法子だけが創作されたキャラクターらしい。

 

当時の若松プロの取り巻く状況や、

ミニシアターの勃興や、

ビデオ時代の到来など、

興味あるエピソードが目白押しの作品。

これが面白くないわけがない。

 

前作の『止められるか、俺たちを』が、

若くして女性スタッフとして飛び込んだ女性を主人公に描いた、

ハードでシリアスな内容だったのに対して、

本作は『ニューシネマパラダイス』的な要素も感じる、

娯楽作品となった。

 

キャストも申し分ない。

井上監督が脚本を務めた『福田村事件』とキャストがかなり被っていたのは興味深いところ。

 

井浦新の演じる若松孝二は、

ますます堂に入った絶品とも言えるのだが、

少々「スター隠し芸」の匂いも(笑)

 

それに対して特筆したいのは、

創造されたキャラクターである金本法子の存在

演じる芋生悠も好きな女優なので、

なかなか見応えのある人物像になった。

 

 

しかし、それだけにあえて苦言を呈したい。

実は彼女は在日韓国人という設定なのである。

自分が映画を撮れなかった理由として、

女性であり、才能がなく、在日だったから」と言う。

その一方で、甘っちょろいくせして若くして監督になる井上に対して、

嫉妬を隠せない。

 

しかし、金本が映画を録れなかった理由は上の3点ではないと思う

いや、映画の中では少なくても描かれてなかった。

想像するに「運と努力」なんじゃないかと思った。

 

特に「在日」に関しては指紋捺印問題に触れるだけで、

もう少し丁寧に描いて欲しかった

在日であることをカミングアウトするシーンにしても、

周囲の反応があまりにも呆気ない。

 

 

さらには、嫉妬の対象である井上に対して、

金本は自暴自棄になって「やらせてあげる」と言う

うーん、理解できない。

それ以上に理解できないのが、

それを拒んだ井上の態度である。

20歳頃のおそらく童貞の井上が、

芋生悠クラスのビジュアルの女性からアプローチされたら、

普通ならホイホイ付いていくだろうに。

理解できん。

もったいない(笑)

 

ともあれ、十分に楽しめた作品で、

8点献上。

見所は、映画館経営の舞台裏に尽きる。