スカパーで録画鑑賞。

 

ビデオ『ベイビー・ブローカー』

2022年是枝裕和監督作品。韓国映画。

ソン・ガンホ主演、カン・ドンウォン、ペ・ドゥナ、イ・ジウン出演。

 

 

ベイビー・ブローカー=幼児の人身売買を描いた人間ドラマ。

と言ったら相当ハードなイメージであるが、

社会的に抑圧された人々を描いた心優しい作品だった。

 

実は、公開時にはあまり良いイメージを持っていなかったのである。

国際的にも評価されている数少ない日本人監督の新作。

しかし、なぜ韓国?

 

日本を代表する監督が韓国で映画を作ると言うのは何を意味するのだろうか?

決してハリウッドではなく、韓国…

 

まあ、それ以上言いたいことは想像にお任せしましょう。

 

そんなわけで、

それほど期待しないで鑑賞したのだが、

これがまたなかなかの傑作だと思った。

 

 

個人的には、

是枝監督は最近あまり良いイメージがなかったのだが(全くの偏見です)、

元々はとても大好きな作品も発表してきた

ただ、一方で嫌いな作品も多かった。

 

出来不出来(あくまでも個人的な評価)の落差の激しい監督だったわけだ。

ちなみに山田洋次監督も然り。

 

そして端的に言って本作は、

韓国映画と日本映画の双方の良い部分がうまく調和された作品だと感じた。

 

止むを得ず幼な子を手放すことになった若いシングルマザー(イ・ジウン)。

善良なのか悪人なのか微妙な人身売買ブローカー(ソン・ガンホ)。

その相棒の青年(カン・ドンウォン)。

人身売買の現場を取り押さえようと監視を続ける女性刑事(ペ・ドゥナ)。

 

 

皆、その裏には複雑な事情を抱えている。

そして、韓国映画らしいキャラクターの強い個性と、

日本映画らしい繊細な演出が、

両者の良さを損ねることなく作品に深みを与える。

 

当然といえば当然だが、

本作に最も近いイメージを感じたのが是枝監督の『万引き家族』である。

いつのまにか擬似家族を形成するような展開は、

良い意味で既視感を感じた。

 

主演のソン・ガンホが良かったのも当然とも言えるのだが、

彼の過去の芝居を見ると、

ユーモアを逸脱した唐突なギャグに違和感を感じたことが多かった。

これは韓国映画全体に言えることでもあった。

しかし本作でのソン・ガンホは、

そのような唐突なギャグ芝居は封印して、

上質なユーモアを感じさせる演技を見せた。

これも日本的な演出の効果だと思いたい。

 

 

また準主役のジングルマザーを演じたイ・ジウン

顔も可愛くスタイルも良い女優で好感を持ったのだが、

実は歌手としても人気のある韓国のスターだったのですね。

そんなことも知らなかったのはこちらの知識不足なのだが、

「スターの顔見せ出演」と思わせなかった芝居と演出は、

実に評価したいところである。

 

 

ストーリー的には、

各人の出自を踏まえた人情劇なのだが、

行っている行為は尽く法律を犯している

それに対する落とし前に関しては丁寧に描いているのだが、

一連の犯罪の中で「殺人」に対する取り扱いがあまりにも軽すぎるのには違和感を感じてしまった。

本作で一番引っかかった部分である。