スカパーで録画鑑賞。

 

舞台中継『もはやしずか』

作・演出:加藤拓也

出演:橋本淳、黒木華、藤谷理子、天野はな、上田遥、平原テツ、安達祐実

2022年4月上演

会場:シアタートラム

 

 

映画をよく観る割に演劇を見ること殆どない。

今回は『私たちはおとな』『ほつれる』で映画監督としても注目された、

演劇界の若き俊英・加藤拓也の作品が放映されると言うので録画鑑賞。

しかも、黒木華や安達祐実と、キャスティングも豪華

 

なかなか緊迫感溢れる、

加藤拓也の映画作品でも見られた濃密でリアルな会話劇

演劇ならではのシンプルな舞台のため、

映画以上にその会話劇の濃度がさらに高まる。

 

 

内容は、障害を持った子供をちょっとした事故で死なせてしまった夫婦(平原、安達)。

不妊治療の末に妊娠した子供が障害を持つ可能性があることを知る若い夫婦(橋本、黒木)。

 

 

そんなシリアスな状況に陥る2組のカップルを軸に物語は展開する。

実に辛い物語である。

しかし、的確な演出と演技ゆえに、

2時間のステージについつい見入ってしまった。

 

演劇初心者の素朴な印象も付け加えておこう。

 

まず驚いたのが、

ステージの向こう側にも観客がいたことだった。

後で調べたら、

それは会場のシアタートラムのユニークな設定によるものらしい。

 

そして舞台装置は実にシンプル

本物の流し台を含む2台のキッチンテーブルのみで、

全てのシーンを描く。

 

シーンの転換は短時間の暗転のみで、

セットは変わらない。

 

冒頭の「障害のある子供を持つ夫婦」のシーンでは、

障害児を人形で描き

その障害児とともに行動する不思議な大人が登場する。

後で分かるのだが、

その不思議な大人は障害児の兄であり、

まだ6歳と言う設定でありながら大人が演じるのである。

その大人が演じるには深い意味があったのだが、

ネタバレにつき省略。

いずれにせよ、

映画ではまずあり得ない、

演劇らしいシュールな演出である。

 

 

そして、やはりメインとなるのが、

黒木と橋本による不妊治療をしている若い夫婦のパート。

障害児が生まれるとしたら、お前はどうする?

と言う辛い問いを問いつけられる。

 

黒木に比べると知名度の低い橋本だが、

本作の実質的主人公だろう。

男性としての情けない部分を晒しながらも、

その一方で妊娠や障害に対する逃れない彼の体験があらわになる。

 

全編シリアスな展開の中、

彼とデリヘル嬢とのパートがコメディタッチで、

物語を破綻させずに膨らみを与える。

 

 

そしてカメラアングルも適切で、

舞台中継番組としてもよくできていたと思う。

 

余談ながらこのステージの入場料は7000円。

会場の座席数は225 。

これだけのキャスティングでこの価格は随分お得では?

と思ってしまった。

演劇も、一度は観てみたいと思った次第