TOHOシネマズにて鑑賞。

 

『夜明けのすべて』

三宅唱監督作品。

松村北斗、上白石萌音主演。

渋川清彦、芋生悠、りょう、光石研出演。

 

 

PMS(月経前症候群)の女性の藤沢(上白石)と、

職場の同僚であるパニック障害の男性の山添(松村)の2人を中心とした人間ドラマ。

 

評論家筋から高評価の、

同郷の若き映画監督三宅唱。

ビデオ鑑賞含めて初期の短編を含むほぼ全作品を鑑賞しているのだが、

実を言うと彼の作風は少々苦手だった。

 

従って本作も不安を持ちながらも鑑賞。

しかし、素晴らしい!

個人的には、三宅監督の最高傑作である。

 

 

得てして難解な作品が多かった三宅監督

前作の『ケイコ目を澄ませて』は難解な作風ではなかったが、

世間の評価ほど個人的には評価できなかった。

しかし本作は、実に優しく温かい

 

『ケイコ目を澄ませて』のヒロインは聾唖の女性ボクサー。

そして本作の主人公も精神的疾患の持ち主という事で、

ある意味ハンディキャップを持った人物ともいえる。

 

そんな2人の日常の描き方が実に丁寧である。

三宅唱が、こんなに優しく温かい演出をするとは!(失礼)

しかも、全く湿っぽくもない。

 

 

また、登場人物たちのキャラクターも皆、

優しく温かいのである。

どうしても職場で迷惑をかける2人なのだが、

それを暖かく迎えてくれる。

それも、わざとらしくない演出と演技も見事だ。

 

主役の2人はそれぞれ1度転職をしている設定も効果的。

2人が出会った新しい職場が「プラネタリウム製作会社」

へえ、そんな会社があるんだ。

と思いつつも、

そんな会社がないとプラネタリウムができないのである。

そして「プラネタリウム製作会社」という設定が、

ドラマに膨らみを与える。

 

 

若い男女のW主演という事で、

恋愛劇に発展することが容易に想像してしまうが、

本作は恋愛要素が極めて少ない

そこも本作の丁寧なところだろう。

 

そんなW主演の松村北斗と上白石萌音

2人とも実に良かった。

さらに小さな会社の社長役の光石研も、

特に目立った役割がないのだが、

これぞ助演という素晴らしさ。

 

 

三宅監督、一体どうしちゃったの(良い意味で)?

 

ほんの少し前に鑑賞した『哀れなるものたち』の毒々しさを、

爽やかに洗い流してくれた一編。

8点。