中古典のすすめ

 

斎藤美奈子 (著)

 

紀伊国屋書店

 

 

図書館から借入。2020/8/28 刊。

 

「中古典」とは、まだ古典に至らない古めの書物。

本書では、1960年代から10年ごとに15冊、

90年代から3冊合計48冊ののベストセラーとなった書物を取り上げて、

現時点での評価を行う。

 

評価は次の2項目。

 

【名作度】 
★★★ すでに古典の領域 
★★ 知る人ぞ知る古典の補欠 
★ 名作の名に値せず 

【使える度】
★★★ いまも十分読む価値あり
★★ 暇なら読んで損はない
★ 無理して読む必要なし

 

実にわかりやすい評価である。

取り上げた書物も、

小説もエッセイもルポタージュも思想書もあり、

広いジャンルにわたる。

 

いわゆる書評本で取り上げられる書物は、

高尚すぎて知らないものが多いのだが、

本書はベストセラーが対照なので、

タイトルくらいは知っている本がほとんどである。

読んだことのある本も、

それなりにあるぞ!

 

取り上げられた書物を挙げていくとキリがないのだが、

例えばこの時代のベストセラー小説としてすぐに思い浮かぶ、

『ノルウェイの森』も掲載されているし、

純粋に一番売れた書物である『窓ぎわのトットちゃん』も同様。

さらには難解な思想書『構造と力』もあれば、

軽薄本の極みである『見栄講座』も。

 

それらがどのような評価になっているかは、

各自書店などでチェックを。

 

また、名作と言われている作品をコテンパンに貶すのも痛快である。

著者はフェミニストと言って良い女性評論家であるため、

男によるマッチョイズムやセクハラ的な内容の書物に厳しい傾向があると思った。

 

そんな作品、一冊くらいは紹介しても良いだろう。

井上ひさしの『青葉繁れる』

作者の自伝的内容を含む青春もので、

何度か映画やドラマ化されているほどの人気作品である。

読んだことはないのだが、

現在のモラル的にはアウトな内容を含んでいるようだ。

それを反社会的ではなく、

痛快青春物語として映画やドラマにもなった時代…

 

古典になるためには、そんな時代の変遷を凌駕しないとならないのか

あるいは時代の証言者として残る道もあるのか。

 

そんなことも思った一冊だった。