NHKスペシャル シリーズ“宗教2世” 神の子はつぶやく

 

宗教2世問題をテーマとしたNHKドラマ。

11/3放送。

 

 

河合優実主演、田中麗奈、根本真陽、森山未来、吹越満、酒井若菜、渋川清彦出演。

出演者も豪華で、劇場映画に匹敵する作品だった。

 

高校生の木下遥(河合)は、

熱心な新興宗教の信者である母親(田中)の元、

妹の祈(根本)とともに宗教2世として育てられていた

父親(森山)だけは宗教から距離を置いて、

家族を愛しながらも飄々と働いている。

 

遥は学校では「お祈りさん」と呼ばれて浮いた存在になっている。

そんなる日、父親が過労で倒れ生死の境を彷徨うのだが、

そんな時にも教会でのお祈りを優先させる母親の姿を見て、

ついに遥は家を飛び出して…

 

 

安倍元首相の暗殺事件以来、

何かと問題視されるようになった宗教2世問題。

それ以前にも『あかぼし』(2013)、『星の子』(2020)(監督が嫌いなので未鑑賞)と言った、

宗教2世を扱った映画は公開されてきた。

 

そして今回のドラマは、

宗教に狂信する

弊害を描くと同時に、

そのような状況に陥った背景を丁寧に描く

 

熱心な信者となった母親が、

今の夫とどのように出会い、

なぜ入信したのか、

過去のエピソードとして描いていく。

 

 

宗教の不気味さよりも、

普遍的な人間ドラマとして見所のある作品となっていく。

 

しかし、遥が母親(宗教)に失望して家を飛び出した後の展開が…

ええ?何ですか。

SMになっちゃうの?

 

しばらく行方不明になった遥だったが、

妹の機転で家により戻す。

ラストも宗教を乗り越えた家族愛を窺わせる感動的なシーン、

と言いたいところだが、

あまりにもとってつけたようなご都合主義な展開

 

この家族の4人をはじめ、俳優はみな好演していたと思う。

現時点では、薄幸な女子高生を演じさせたら河合優実の右に出る者はいない

その通りの適役。

中でも「悪役」ともいえる田中麗奈だが、

宗教にのめり込んでいる母親の狂気を見事に演じていた

 

 

この母親だが、

結局は逃れられない貧困を原因に宗教にのめり込んでいった、

運命の犠牲者的な描かれ方をしている。

しかし、その造形にしても突っ込みどころ満載である。

ブラック企業に勤めていたOL時代、

パワハラ上司から激しく叱咤されて、

自暴自棄な状態で知り合ったたこ焼き屋の青年(後の夫)と恋に落ちていく。

 

この母親にも同情の余地があるんですよ、

とでも言いたいのか。

しかし、全く同情できない。

そもそも、大事な商談に1時間も遅刻するような女なのだ。

パワハラ上司に指摘されるまでもなく、

社会人として失格である。

こんな女だから、

悪徳宗教に引っかかるのも無理はない。

そう思ってしまった。

 

そんなわけで、

一見NHKらしい良作と思わせながら、

かなり突っ込みどころの多い作品だった。