ユナイテッド・シネマにて鑑賞。
映画『別れる決心』
パク・チャヌク監督作品。パク・ヘイル、タン・ウェイ主演。
真面目な男性刑事と、妖艶な女性容疑者との間に漂う危険な関係を、
静謐かつスタイリッシュに描いたサスペンス。
パク・チャヌク監督はいわゆる「復讐3部作」や『お嬢さん』など、
激しい暴力や性描写を特徴とした作風の監督である。
本作は、ストーリー的にそのような作風にもなりそうなところ、
あえて抑えた演出を徹底した作品となった。
妻とは週末婚状態にある、真面目な刑事ヘジュン(ヘイル)は、
ロッククライミングの死亡事故を担当するのだが、
被害者の男性の妻ソレ(タン・ウェイ)の事情を聴取していくうちに、
ソレの行動に疑念を感じていく。
その一方で、彼女に対する耐えがたい感情が芽生えていく。
その感情が膨らんでいく描写が実に繊細なのである。
ちょっとした表情や目線、
体のごく一部の接心や接触。
またそのカット割が、
時間や空間を飛びこし、
シュールな演出へと導かれる。
そしてその事件は、表面上の解決を見せ、
ふたりの間には大きな進展がないまま、別れる。
そして13カ月後。
新たに生活の地を変えたヘジュンの前に、
別の男と再婚したソレが現れる。
しかし、そこでもヘジュンの夫が変死するのだが…
事前の情報から、非常に難解な作品と身構えて鑑賞した。
それは、シュールな演出によるものかと予測をしていたのだが、
その演出や編集自体、
映画の魅力を増すものであり、
決してストーリーの理解を妨げるのもではなかった。
むしろ、ストーリー自体が分かりづらいのである。
表面上は被害者であるソレは、
本当に加害者なのではないか?
そいう疑念も曖昧に進む。
スマホを使ったサスペンス上のトリックなども描かれるのだが、
混乱するばかりだ。
特に理解不能だったのが、ラスト。
「衝撃のラスト」とも言われているようだったが、
理解できなかったので衝撃も何もあったものじゃない。
二人の感情がようやく交錯していく末のあの展開。
むしろシュール系の作品にありがちな演出に思えてならない。
まあ、理解できないこちらのアタマが悪いだけなのかもしれないが(苦笑)。
ラストを除き、お互いほとんど体に触れることもない関係。
それでいて、決してプラトニックではない官能性。
それでいて、ムードだけで流れない演出。
例えば、二人だけの事情聴取のシーンでは、
高級な寿司折。
コミカルとシュールの絶妙なバランスである。
そのような、綱渡りのようなバランスで映画は進むのだが、
その結果があのラストだと、
放置プレイされてしまったような途方感を感じてしまったのである。
いとも簡単にエロい関係になりそうなところを、
グッと堪える演出は斬新ではあった。
逆にサスペンス部分のストーリーをあそこまで複雑にする必要があったのか疑問。
6点。