サツゲキにて鑑賞。

 

映画『銀平町シネマブルース』

城定秀夫監督作品。小出恵介主演、吹越満、宇野祥平、さとうほなみ、渡辺裕之出演。

 

 

架空の町・銀平町の寂れた映画館スカラ座を舞台とした、

やさぐれた人情劇

一文無しの近藤(小出)は、ホームレスの佐藤(宇野)や梶原(吹越)らと、

怪しい貧困ビジネスの事務所で知り合う。

さすがにその怪しさから逃げ出した近藤は、

梶原の後について行くと、

そこは彼が経営する映画館のスカラ座だった。

一方、佐藤は事務所に任せて生活保護を受けて、

仕事をしなくても金が入る生活を始めるのだが…

 

 

銀平町って、架空の町だがどことなく場末の匂いを感じる。

しかも「シネマ」で「ブルース」だもんなあ。

底辺に蠢く、ウダツの上がらない連中の物語であることが、

タイトルから伝わってくる。

こりゃあ、好みのタイプの作品に間違いない

 

そして、冒頭からの展開で

それを確信する。

久しぶりに見る小出恵介も、

良い面構えだ。

 

しかし…

 

あの、ホームレス寸前の男・梶原が、

映画館経営者だって?

まあ、「シネマ」の話だからそう来るんだろうけど、

そこから違和感を感じ始めて来た。

 

今時、場末の映画館経営者なんてホームレス寸前の生活をしてるんだよ、

と言った映画関係者の自虐的設定などとも解釈できる。

 

そして、近藤がそのスカラ座で生活をしているうちに、

実は彼は、カルト的人気があったホラー系の映画監督だったことが分かる。

えええ?そんな人物だったんかい。

 

今回はいつも以上に、ネタバレが多いのでご注意を。

 

そして彼の所持していたノートPCには、

3年前に撮影した未編集の映画の動画が残されていた。

その映画の主演女優が彼の妻(さとう)であり、

それから映画が作れなくなった彼は、

妻と別れて今のような生活に陥っていた。

 

結局主人公は、

それなりのエリートのスランプの果ての姿だったのである。

どことなく、期待していた内容からずるずるとずれて行く。

 

一方、経営の危機に瀕するスカラ座の起死回生の策として、

開業60周年のイベントやクラウドファウンディングを試みる。

そのイベントでの上映作品として、

佐藤の未編集の映画を完成させる。

 

 

今時の映画の制作方法はよく分からないが、

素人映画でもあるまいに、ノートPCの編集ソフトだけで完成できるのか?

少なくても、音楽や音響、場合によってはアフレコだって必要なんじゃないだろうか?

まあ、その辺は映画のプロが作っているのだから、

素人のワシが口出す問題じゃないだろう。

 

また、スカラ座に飛び込みで若い女性監督(小野莉奈)が、

自作を上映させて欲しいという。

それも、あるのだろうか?

 

そんなイベントの準備をして行く最中に、

近藤の別れた妻が娘を連れてやって来たり、

人情劇としては実に甘ったるい展開が続く。

 

また、生活保護を受けていた佐藤も、

最初は優雅に暮らしていたものの、

貧困ビジネスの犠牲になり潰れそうになる。

そんな彼を、近藤と梶原が救うのだが、

その流れも噴飯物。

ええ?梶原って弁護士だったの!?

 

なんか、都合の良いエピソードが並びすぎ。

 

なんだかんだで、

記念イベントが開始される。

そして、近藤の作品もめでたく上映され、

上映が終わった後、

佐藤は座席で沈黙し…

 

おいおい、『キネマの神様』かよ!

 

何だかなあ、

やさぐれたアウトローの世界じゃなく、

映画好きのほのぼの人情劇になってしまったよ。

 

映画愛が溢れていたり、

場末の映画館を舞台にしたり、

『ニューシネマパラダイス』の亜流的な映画って、

今では逆にハードルが高くなってしまっていると思う。

 

既視感丸出しのエピソードの連続で、

ラストもほぼ予想通り。

 

はっきり言おう。駄作である。

 

しかし、正直に言おう。

これがまた憎めない作品で、

結構好き(笑)。

 

役者が皆、適材適所。

映写技師役に渡辺裕之が登場したのには驚いた。

昨年、自ら命を経った俳優である。

かなりギリギリでの撮影だったのだろう。

いい味を出していた。

 

 

近藤の元妻役のさとうほなみは、

城定監督の『愛なのに』に続いての出演。

それよりも、その中学生の娘役として登場した子が、

可愛いの何のって!

調べたら、谷田ラナと言う女優。

これは、絶対来ます!

 

 

同系統の映画として思い出したのが、

『浜の朝日の嘘つきどもと』

実に嫌な部分ばかりを覚えている作品だった。

しかし、調べたら自分の採点は5点。

それなりに好きな部分もあったのだろう。

 

そして本作。

悪口ばかり書いたが、

憎みきれずに、7点

甘い!(苦笑)