スカパーで録画鑑賞。
ビデオ『本気のしるし ≪劇場版≫』
2020年深田晃司監督作品。森崎ウィン、土村芳主演、宇野祥平、石橋けい、北村有起哉出演。
おもちゃ会社に勤める辻(森崎)は人に頼まれたら嫌とは言えない好青年だが、
「曖昧と無難」な態度を繰り返しており、
人知れず同僚の女性二人と付き合っている。
そんなある日、踏切で車で立ち往生している女性・浮世(土村)が危うく事故に遭うところを助ける。
まさに浮世離れしている浮世に、
辻は呆れながらもついつい世話を焼き続けて行き…
公開したのも知らなかったが、一昨年の映画のベストテンで高評価を得ていて初めて知った作品。
何と、232分の大長編。
ようやく観る機会を得て、この度鑑賞。
何と言って良いか、難しい作品(笑)。
確かに、面白い。
しかし、監督自ら認めるように、イライラする作品でもある。
土村芳は、全く知らない女優だったが、
彼女が演じる女性・浮世のキャラクターが前代未聞。
真面目だがどこか屈折した辻を、
結局は翻弄しまくる。
悪女と言うキャラではないのだが、結果的に男を破滅させる。
浮世と付き合っていくにつれて、
彼女の驚くべき正体が見えてくる。
いや、余計分からなくなる。
その展開が、実にイライラするのである。
観る人によっては、イライラしてギブアップするだろう。
しかし、イライラしつつも今後どうなっていくか目が離せなくなる。
そして、作品は232分…
こんなに長い必要があったのかは分からない。
しかし、長いお陰でメインキャストの二人以外の登場人物の造形も、
丁寧に描かれる。
中でも、辻と付き合っている年上の同僚女性・尚子(石橋)と、
浮世に金を貸したヤクザの親分・脇田(北村)の存在は大きい。
どちらもややエキセントリックなキャラながら、
主役の二人の立ち位置を、
的確に解説する役割を担う。
大まかに言って「ひとりの変な闖入者によって、平凡な人生が狂っていく」と言う展開は、
深田監督のお得意のパターンとも言える。
それでも本作を特異な作品たらしめるのは、
やはり浮世のキャラと、それを演じた土村芳の存在が大きいと思う。
ありがちなセクシーさを露出するわけではないが、
「男の人から『いい』と言われる」と言った、
奇妙に無自覚な発言やら、
全くお金がなくて風呂にも入っていないと言いながら、
妙に小綺麗な服装をしていたり。
服装と言えば、浮世は全編ほとんどノースリーブ姿。
長い映画に特有の長大重厚感はないけれど、
だらだらとこの世界に浸ってしまう稀有な作品で、
観れて良かった。