10点作品のうち、役所広司主演がなんと2作。
松田優作も若尾文子も、入ってないのに。
恐るべし、役所。
1996年周防正行監督作品。役所広司主演、草刈民代、竹中直人出演。
ヒット作だから見た人も多いでしょうが、一応解説を。
平凡なサラリーマンの主人公が、ふと見かけたダンス教室の美人インストラクターに一目惚れ。
それをきっかけに社交ダンスを習い、大会に出場するまでになる、と言うコメディ。
無芸そうな男が、きっかけは少々不純とは言え、
社交ダンスの素晴らしさに目覚めて行く過程が、微笑ましくも素晴らしい。
誤解を覚悟で言うと、社交ダンスって正直言って時代遅れでださくてきもい、と言う面も否定できない。
この映画でも、その点は逃げないで正面から捉えている。
しかし、それを超える素晴らしさを十分に伝えている。
ださくてきもい部分は、主人公とともにダンスを習う中年男の仲間たちがになう。
中でも出色だったのが、ラテン専門の変人、竹中直人。
彼の芝居だけでも、大爆笑。いやあ、笑った、笑った。まあ、好みもあるでしょうが。
素晴らしい部分は、本職がクラシックバレリーナの草刈民代が演じるヒロインや、
主人公にダンスの素晴らしさをレクチャーする年配の女性などの存在。
最初は軽いコメディだと思ってみていると、徐々に社交ダンスの素晴らしさに魅せられていき、
映画自体が実に風格のある芸術作品のようにまで見えてきた。
この作品では、誰も死なないし、あざとい感動の押し売りのようなシーンもない。
それなのに、クライマックスで踊る主人公の姿を見るだけで、目が潤んでしまった。
…とまあ、非の打ち所のない傑作だと思う。
ただひとつ、気になる事がある。
それは、この映画が
「男の浮気願望を肯定する内容」
なのではないか?と言うこと。
その点を、フェミニストから突っ込まれたら、タジタジである。
心配なので、映画批評サイトで、この作品に対する否定的意見にも目を通してみたら、
幸いにもそのような意見は見当たらなかった。
ホッとした(何心配してるんだよ!)。
ちなみにこの作品は、R・ギア主演でハリウッドでリメイク。
リメイク版は結構に原作に忠実な内容であったが、
ラストは主人公と奥さんがダンスを踊ると言う、日本では考えられないシーンで終わる。
さすがアメリカ、フェミニストからの攻撃をやんわりと避けたんだろうな。