『田園に死す』

1974年寺山修司監督作品。菅貫太郎、高野浩幸主演。原田芳雄、八千草薫出演。
歌人で劇団天井桟敷主宰でもある故・寺山修司監督の代表作。

公開時はまだ高校生だったので、このようなマニアックなアート作品は観る事もなかった。
しかし、この作品の紹介写真を雑誌などで目にし記憶していた
学生服姿の白塗りの少年
恐山を背景に佇む黒装束の老婆たち
何なんだろう?この映画は。
得体も知れぬ不吉な予感が、深層意識の中に忍び込んでいた。

それから4年ほど後になるだろうか?
本格的に映画も観るようになり、メジャーな作品ばかりではなく、
よりマニアックな作品にも目を向けようと思っていた矢先、
ある映画館で上映。
ついに鑑賞する機会に恵まれた。
ビデオもDVDもない時代である。

ぶっ飛んだ
監督の自由奔放なイメージが、見事に映像化。
こんな映画、あり?とばかりに、目から鱗が落ちた感じだった。

人工着色された恐山風景。
畳を剥がせば、真っ赤な湖水。

主人公の少年時代と、中年の現在が交錯し、二人は対峙する。
また、少年時代の恐山と、現在の新宿の光景も交差。

少年は、母親から溺愛され、そこから逃れようと隣の花嫁との駆け落ち、そして母殺しを夢想。
仏壇の前で狂女に犯される、悪夢的エロス

極彩色のサーカス団の到来。
川上から流れて来る雛壇。

断片的なカットしか説明できないが、
今までに体験する事のなかった、映画的祝祭。
その後の映画鑑賞の視点にかなり影響を受けた体験だった。

得てして、アート指向の作品は作者の独りよがりがまさり、悲惨な結果に終わる事が多いと思う。
しかし、この作品は製作に当たり極めて真っ当な技術の上に、
観客を楽しませるサービス精神も無視せずに完成させたのだろう。

アート作品初心者にも楽しめる、チャーミングな作品となったのである。


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