『ダンサー・イン・ザ・ダーク』

2000年ラース・フォン・トリアー監督作品。ビョーク主演。
それまで”後味の悪い作品”と言えば『セヴン』が代表的だったのだが、
この作品はあっさりとトップの座を獲得。
後味ばかりじゃなく、主人公への不幸が襲いかかる連続と言う途中までの展開も、何から何まで気分を最低にさせるとんでもない作品だ。

本当はそんなの好きじゃないんだけど、
ここまで徹底すると逆に快感になってしまうんだから不思議なもの。

しかも、ミュージカル仕立てと言う所がさらに、奇妙キテレツなのである。
「ミュージカルって、それまで普通に芝居していた人が急に歌ったり踊ったりするのが不自然で、
嫌い」
と言う意見をよく耳にする。
ある程度、同感である。

この作品でのミュージカルシーンは、基本的にストーリーから遊離されていて、
主人公の白昼夢と言う形で表される。
不幸のどん底の主人公が。ちょっとしたきっかけから空想の世界に入り、
素晴らしい音楽と映像のミュージカルシーンの導入。

そして、歌と踊りが終わると、再び地獄のような現実が待っている。
さらに全く救い用のない衝撃のラスト

救いようのない展開と後味の悪いラストと言えば、意外にも高峰秀子主演の
名もなく貧しく美しく』とも共通する。
しかしあの作品は、評価できない。
妙に名作ヅラして、感動させようとしている所が嫌い。
何度も言っているが、人の死を感動の小道具にするような映画は嫌いなのである。

本作は、そのような安易な感動の名作指向がないのがいい。
徹底的に悪趣味で加虐的なのである。
トリアー監督の本領発揮とも言えるな。
トリアー監督はそう言う作風ばかりではなく、本人のキャラ自体結構アブナいらしい。
最近は鬱病で入院していたらしいし。

もちろんそれだけでは評価しない。
映像や音楽の素晴らしさもあっての評価

また主人公が勤める工場の先輩女工員にC・ドヌーヴ
中年の女工員にして、あまりにも美しすぎるアンバランスさも、
この映画の奇妙さを際立たせていたように思う。

鑑賞するにあたり、精神と肉体のコンディションを整える必要がある作品で、
決して万人に薦められるわけでないが、点数は10点。

イメージ 1