『タイタニック』
1997年ジェイムズ・キャメロン監督作品。ディカプリオ主演。
一連の「10点作品」の中で、もっともメジャーな作品で観ている人もほとんどだろうな。
なんで、改めて紹介するまでもないだろうが、なぜ10点なのかを考えてみる。

過去にも何度も映画化された、巨大客船が沈没する大スペクタクル映画。
それだけでもそこそこ面白いとして、この作品は傑出していた。

まずは映像の素晴らしさ。
97年当時はすでにCG技術も発達していて、この作品も当然CGは使っているのであるが、
その当時のトレンドからしても意外にもCGの使用は最小限に抑えられており、
ミニュチュアを使ったある意味古典的撮影で臨場感溢れる映像を作り出していたのである。
もちろん、気も遠くなるほどの巨額の制作費を使って、の上の話だ。

金さえ使えば、いい映画が出来るわけでもない。
キャメロン監督は、とにかく映画に巨額の制作費を使いまくる
しかも、その使い方があまりにも適切なのだ。
無駄のない巨額な制作費の作品を大スクリーンで観る。
日頃、結構貧乏臭いクセのある作品を好んで観るワシではあるが、
そう言った、ウルトラミラクルなスーパー王道な映画を観るのは、最高の幸せである。

ひとつひとつのシーンへの細かい配慮も、手を抜いていない。
スピルバーグ的なサービス精神満点なシーンの連続

個人的に一番好きなシーンは、沈没が進行して生きる望みが殆どなくなりつつある時点での、
楽団の演奏シーン。
楽団のメンバーたちは、自分の生きる望みを捨ててまでして、静かにレクイエムを演奏し続ける。

そして、主役のディカプリオ。
この作品以前にも『ギルバート・グレイプ』で、各映画賞を授賞した経歴のある、
むしろ”演技派”の若手俳優と言う評価が当時はあったはずだ。
そして、主演した本作品での歴史的な大成功。
作品は、アカデミー賞の各部門賞の殆どを独占するほどの評価を得たのだが、
主演のディカプリオだけは、賞にノミネートもされず蚊帳の外。
個人的にはこの映画でのディカプリオ、野心的だが清潔感溢れる若者を演じ、
彼を観るだけで清々しい快感を感じたものだった。
クセのあるひねくれた役柄を演じれば、賞をもらえるのか?
こんなワシなのに、爽やかな若い男を観て気持ち良かったんだから、
それはもっと評価して良かったんじゃないだろうか?
でも、ディカプリオ自身は、そんな賞とは全く関係なしに全世界的な名声を得たのだから、
アカデミー賞なんてどうでも良かったのかもね。

そんなスケールのでかい作品なのだが、
考えてみると一人のお婆ちゃんの回想の一部でしかないと言う構造。
何とも微笑ましい。

言うまでもないが映画は基本的にスクリーンで観るもの。
多くの映画の中でも、この映画ほどスクリーンで観る価値のある作品はそう多くない。
ちゃんとスクリーンで観れた事自体、映画人生の中での幸福である。