「新撰組 幕末の青嵐」
木内 昇
集英社文庫
久しぶりに 長編を読み終わりました
約550ページ
細かく章を 区切っていて
各章ごとに主役が違うのです
近藤の武士になるという夢
土方の怜悧な判断能力
沖田の無邪気さと深遠さ
山南の温和さ
斉籐の孤高
永倉の冷静
藤堂の熱さ
原田の豪胆
井上の慈愛
ひとりひとりを 主役にすることによって 見方が変わり
隊内の小さな軋轢や悩み、迷い、苦しみが
等身大に伝わってきます
たしかに試衛館メンバーが中心ではありますが
清河の謀略
武田の狡猾
伊東の傲慢さなども しっかり描かれていて
幕末という 奇麗事だけでは収まらない黒い部分も
浮き彫りになっていました
また 佐藤彦五郎が随所で語り
佐幕でも薩長でもない 俯瞰的な語りが
新撰組の存在意義を 考えさせてくれます
そして 永倉が語る章も多く
近藤-土方ラインからではなく、内部から見た新撰組の
繊細な関係性も 見ものです
池田屋事件が表のヤマなら
内側のヤマは 芹沢粛清と山南の死ですね
山南が温和さの影の中で 土方達とすれ違ってゆく壮絶な苦しみ
芹沢粛清や山南切腹を命じる土方は 冷徹と深い情の狭間を 揺れる
いつも無邪気な沖田が 脱走した山南を発見した時の恐怖・・・・・
ああ 見ごたえのあるシーンが多すぎて 何を書けば良いやら・・・
各章が10ページ前後だし、文体もやわらかく簡潔で読みやすい
それは 歴史実証ではなくて 人物の心を丁寧に描いているからかもしれません
是非 オススメの一冊です