最近、千鶴が気になって仕方ない。
そもそも彼女の目的は父親探しなのに、綱道さんの目撃情報は驚くほど少ない。
組織的な何者かの隠蔽工作を疑ってしまうくらいだ。
藤堂平助
「これじゃ凹むのも無理ないけど……」
鬼には狙われるわ、男所帯に詰め込まれるわ、こんな状況でも気丈に振る舞う千鶴を見ていると胸が痛くなる。
他の皆はどうか知らないが、オレは時折、千鶴が辛そうな顔をするのに気づいていた。
俯いて歯を食い縛って、何事もなかったかのように顔を上げて笑う。
藤堂平助
「なんとか元気づけたいよな」
あんな健気な奴、放っておけるかよ。
そしてオレ--藤堂平助は、とにかく千鶴の様子を見に行くことにした。
今日は天気が良いせいか、彼女は縁側でぼーっとしている。
声を掛けるべきか悩んでいたら、向こうから近藤さんが歩いて来た。
近藤 勇
「雪村君。蜜柑でも食べないか?」
いきなり切り出されて、千鶴も困ってるみたいだ。
近藤さんって相変わらず空気が読めないなと呆れてしまう。
近藤 勇
「蜜柑は滋養がある。風邪を引かんように沢山食べてくれ」
雪村 千鶴
「……はい」
押し付けるようにして蜜柑を渡す近藤さんに、千鶴は何故かふんわりと笑って頷いた。
あの笑顔は可愛くて、凄く良いと思うんだが--
藤堂 平助
「も、もしかして今の蜜柑で、あいつはちょっと元気を取り戻したのか……?」
だとしたらオレも負けていられない。
早速、千鶴が喜んでくれそうなことを探しに行こう!
藤堂 平助
「確かあいつは、あの小太刀を大事にしてるんだったよな……」
あの小太刀をぴかぴかに手入れしてやれば、きっと千鶴も喜んでくれるはず。
桐箱に入った道具を持って、オレは意気揚々と縁側に戻ろうとしたんだけど--
斎藤 一
「平助。その道具は俺のだろう、返せ」
廊下で一君に出くわしてしまった。
藤堂 平助
「た、確かに借りっ放しになってたけどさ。もうちょっと貸しといてくれない?」
斎藤 一
「駄目だ。俺も今すぐに使う用がある」
言うなり一君は桐箱を奪って、何処かに歩き去ってしまう。