一時期、伊丹十三監督の映画は、

話題になった。

公開されるたびに、今までと視点が違う映画に、

驚かされた。


彼の妻である宮本信子を主役にした映画は、

本当におもしろかった。

彼女の舞台的な演技は、

前向きに何にでも立ち向かう主役には、合っていたのだろう。


ミンボーの女は、

ヤクザと戦う弁護士と出会うことにより、

ホテルマンが成長していく姿を描いている。

今まで、我々が思い浮かべるヤクザ映画とは、まったく異なる。


ヤクザが怖くない人は、

少ないだろう。

やはり、怖い。

ましてや、ターゲットとなった場合、

平気でいられない。


中尾彬が、大画面で映し出された時には、

私は、思わず、「コワーーー」とつぶやいた。

しかも、関西弁である。

こういう時の柄の悪い関西弁は、効く。


もちろん、伊東四朗も、

また、別の怖さがある。

中尾彬がわかりやすいヤクザであるならば、

伊東の場合は、

何を考えているのかわからない怖さが潜んでいる。


いずれにしても、

伊丹十三氏が作り出す映画が、

観られないのは、

非常に残念である。

独特の才能があった。

日本の監督の中でも、

世界に通用する数少ない監督の一人であったのに。