皆さんは、朝、すぐに起きられるだろうか。
私は、夜型人間で、朝が極めて弱い。
なかなか、起きることができない。
人を起こすときに、
一番、有効な音は何かと言うと、
「蚊の飛ぶ音」だ、と言うことだ。
「蚊の飛ぶ音」が一番、人を不快にさせるから、らしい。
この【バートン・フィンク】にも、
「蚊の飛ぶ音」がキーポイントになって
使われている。
「蚊の飛ぶ音」があるのとないのでは、
この映画の出来栄えが、全然、違ってくる。
この映画は、
91年カンヌ国際映画祭三冠(グランプリ/監督賞/主演男優賞)に
輝いた作品である。
私は、この映画を観て、
初めて、映像が人に与える影響を思い知らされた。
バートン・フィンクを演じるジョン・タトゥーロは、
頭の形が異様に上に重きが置かれて、
バランスが取れていない。
その頭の形と彼の融通性が利かないカタブツさが、
よく似合っている。
ニューヨークで芝居一辺倒の劇作家が
ロスでお手軽映画の脚本を書くことになったが、
彼は、思うように筆が進まない。
あせって、イライラしてしまう。
それに、自分が書きたい作品とは、まったく異なる。
だからと言って、断ることもできない。
そこに、ホテルの隣室のデブッチョの男と
仲良くなる。
二人には、共通点がないように見える。
実際、バートンは、迷惑な感じがよく出ている。
このデブチョには、大きな秘密があった。
【スモーク】の時にも、書いたが、
この映画も全くもって、
始終、妙な空気感が底辺に流れている。
それは、もちろん、【スモーク】とは、違う。
【スモーク】が日常であるとしたら、
【バートン・フィンク】は、非日常である。
ある男に起こった、
不思議な不思議な、経験。
あの不愉快な「蚊の飛ぶ音」のような。
それでいて、蚊に刺された後は、
音以上にその部分が、気になる。
かゆくなり、どうしても、爪で掻かずにいられない。
爪で掻けば、なおさら、赤くなるのが分かっているにも関わらず、
気になって仕方がない。
けれど、その時には、
音が気になっていないことに、気がつく。
刺されるまでが、不愉快なのだ、わかる。
そんな映画である。
