そのバーが終わる時間に近づいた。
私たちは、清算をしようと席を立った。
マスターが声をかけた。
『ちょっと、待ってて。』
私たちは、顔を合わせた。
何か、勘定が合わないのだろうか。
もしかしたら、
関西弁で話していたので、田舎者と見られて、
法外な値段を取られるのかもしれない。


他のお客さんがいなくなった後で、
30前後のマスターは、カウンターの席に座って、
私たちに話しかけた。
『ごめん。カウンターでちょっと、話を聞いてて、
 少し、話をしたいな、と思ったんだ。
 最初は、関西弁で変な話をしてるな、と思っていたんだけど、
 何か、ちょっと、話をしてみたいな、と思ったんだ。』
彼は、映画に詳しかった。
私はスポーツに詳しくなかったが、
私の友人の修子は、スポーツを観るのが好きなので、
マスターと話していた。
『お店のお客さんで、なかなか、こんな話できる人がいないんだ。』
彼は、言った。
休みの日は、サイクリングをしていると話した。
『なかなか、太陽に当たる機会がないからね。』
夜の世界で働く人であるが、少し、また、違ったタイプのように思えた。
時計は、4時になろうとしていた。