ホテルに戻ると、私宛にメッセージが残っていた。
Zからである。
『明日、会社に連絡してください。』
というのである。
連絡は、しなければいけないだろう。
このまま、放っておくわけにはいかない。
決着は、つけるべきなのだ。
『Zさんから。』平田は、私に訊いた。
『うん。まぁね。』
『ええな。想うてくれる人がいて。』
彼女は、ため息をつきながら、言った。
私たちは、別々のシングルの部屋に分かれた。
結局、一晩中、いろいろ考えて、眠れなかった。
元来、私は、不眠症である。
眠れないつらさを味わうのは、今日が初めてではない。


平田は、私に『彼氏と会う時に、一緒にいて欲しい。』
と頼んだ。
『取り乱してしまうかもしれへん。』
『わかった。そないするわ。
 けど、最初は、二人で会い。
 私は近くの席にいるから、あやしい雰囲気になったら、
 アンタらの席に行くしな。』

朝、10時過ぎに、私は、彼の会社に電話を入れた。
彼が、電話に出た。

平田は、私の横で、話を聞いていた。
『昨日の会社の件だけど、断っておいたから。
 あなたの心配していたことも、ちゃんと説明をしておいたんで。』
『お手数をおかけしました。
 ごめんなさい。』
『何か、こっちも却って迷惑をかけたみたいな形になっちゃって。
 ところで、今日の夕食でこれからのことを、話したいと思っているんです。』
『申し訳ないです。
 平田の用事で、約束が入ってしまってるんです。』
『でも、明日、関西に帰ってしまうんでしょう。』
『はい。』
『帰る前に、一度、話ができませんか。』
正直な感想を言うと、今すぐに、電話を切りたかった。
それぞれの想いは、すれ違うばかりである。
『また、夕方に、連絡させてください。』
それで、電話を切った。