それでも、彼は、いろいろと話をした。
食事は、おいしかったが、私は緊張していた。
それは、彼の緊張が私に伝染したようであった。
食事が終わった後で、彼は、私たちにお手洗いの場所を教えた。
確かに、お化粧直しをする必要があった。
『ええ人やん。』
私の友人は、お手洗いの鏡越しに話しかけた。
私は、『うん、まぁな。』としか言えなかった。
お手洗いから出ると、彼はすでに、清算を済ませていた。
彼の手には、私のコートがあった。
彼は、私の背中にそっと回り、コートを着せてくれた。
ウェイターは、そんな私たちの姿をチラと見た。
一体全体、こんなことをされて、嬉しいと思う日本人女性は、
何人くらいいるのであろうか。
私は、オロオロしているばかりである。