彼と会ってから、どれくらい過ぎた頃だろうか。
彼からいつものように、電話があった。
『僕の幼ななじみが、ある東証二部の会社の社長の息子なんだ。
そこの会社で働いてみる気はないかな。』
その会社は、ある事業を組み入れて、
これから、大きく伸びようとしていた。
私は、そのことは、知っていた。
一応、その頃は、日本経済新聞を読んでいたから。
『もし、その気があるなら、彼に頼んでみるよ。
正直言うと、もう話は通してあるんだ。』
彼は、申し訳ないが、一度、上京してくれないか、と言った。
私は、少し、考えさせてほしい、と返事をして、電話を切った。
私は、東京の男性に熱をあげていた私の友人である平田に、相談した。
彼女は、私に強く勧めた。
『加藤(私の名前)、チャンスやん。
ほな、一緒に、東京、行こか。』
彼女も、好きな男性に会いに行くというのである。
彼と電話をして、日時を決めた。
そして、私は彼宛に履歴書を送った
私の友人とも、調整して、私たちは、上京することにした。
彼は、その日、会社を休んでくれていた。
はぁ。これで、私は、彼に対して、またしても、借りができた。
ただの単なる好意だけであれば、感謝の気持ちだけで済む。
彼の気持ちは、熱すぎるのだ。
ぬるま湯だといつまでも入ることができる。
けれど、熱過ぎるお湯は、私に危害を与える。