毎週のように、電話があった。
私は、うんざり気味である。
時々、関西に出てくる、と言う。
私は、断るのに苦労した。
それから、毎月、銀座の松屋デパートから、額縁に飾られた版画が届けられた。
言うまでもなく、彼からである。
お金持ちの彼にとっては、余り意味がなくても、
私は、関西の有名なお肉を送った。
そうでないと、たまらなかった。
押しつぶされそうである。
私は、彼の好意に応えられない。無理なのだ。


私は、ユーモアとシリアスがいいバランスで、
内在している人にしか、恋愛感情を抱けない。
例えば、いい年をした私が、小学生みたいに
『アーメン、ソーメン、ヒヤソーメン』
何て言っても、一緒に、笑ってくれる人だ。
あるいは、立っている彼の後ろに静かに近づき、
『ワッ』と驚かしたりしても、それを許してくれる人。
または、冗談に応えて、
『ドテ』と私が言って、一方の肩を極端に下げる。
それを、一緒にしてくれる人。
Zは、私が、そんなことを、言ったり、することを、いやがるだろう。
ものすごく、いやがると思う。


さらに、きちんと、シリアスな話もできて、「ばかチン」でないこと。
ただし、見た目は、関係ない。
それを、職業としていない限りは。
偏差値も、関係ない。
私は、自分自身のことをかえりみず、
自分の好みは、頑固に押し通す。
『お前は、なんぼのモンじゃい。』と言われたら、一言も言い返せない。
少なくとも、過去は、そうであった。
今は、恋愛と言うのに、鈍感になっている。
何しろ、生活が第一である。
年齢的にも、少なくとも、私はそういう感情は失せてきている。


けれど、今、Zと会ったとしても、
私の答えは、変わらない。
息が詰まる。
これが、正直な感情だ。