京都で、着物暮らし

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『雲がおしえてくれること』
レイチェル・カーソン 文 ニッキ・マクルーア 絵 千葉茂樹 訳 荒木健太郎 監修
あすなろ書房 2026年3月

本書の著者、レイチェル・カーソンと言えば『沈黙の春(1964年新潮社)』や『センス・オグ・ワンダー(1996年新潮社)』などを刊行、生態系について深く世界中に知らしめ、環境保護の先駆けとなった科学者である。これらの著書を一読した人は多いのではないかと思う。その著者の幻の原稿が70年ぶりに発見され、このような形で上梓された。本書の絵を担当したニッキ・マクルーアさんによると、この原稿は1956年、アメリカのテレビ番組がレイチェル・カーソンにとあるプロジェクトを提案。そのプロジェクトに感銘を受けた彼女はその番組の台本を書き、番組は放送されたそうである。そして、現代になりこのプロジェクトを知った出版社がイラストレーターである自分自身にプロジェクトの一部となるものを送ったようである。しかし、それは完全版ではなかったため、レイチェル・カーソンの著作管理団体に連絡をとったところ、台本は保管されておらず、その後の調査で初稿がイエール大学図書館、最終稿がブロード・リーチ・メディアのアーカイブにあることをつきとめ。そしてようやく本という形になったということであった。

この作品は、「雲」という視点から、地球を取り巻く空気の循環を伝えてくれるものである。最初に「海」は2つあると、カーソンは記している。1つは誰もが知っている「塩辛い海」のこと。そして、もう1つが「空気の海」。その空気の海を次のような形で表現している。「空気のほとんどなくなる高度100キロメートルより上は、宇宙といわれており、生命をささえる濃い空気があるのは、いちばん下のほんの10キロメートルほどだけです」。空気が限りなくあるようにこれまで感じていたが、ここで一気に空気が私たちの生存するぎりぎりのところで、維持してくれていることに初めて気が付いた。しかも、雲にふくまれる水分が循環することにより、空気が滞留することなく循環すると指摘している。そのための雲の役割は、私たちが想像をするよりもかなり重要であることが本書で記されているのである。それに付随して、雲の動きというのも細やかに語られている。例えば、雲が雨を降らせるシステム。一般的には「雲の中で水蒸気が雨になる」という形でしか、見聞きしたことがないが、ここには「雲の中心にひめられた気流のみだれと変化のなかで、水蒸気は液体にもどりはじめ、ついには、地上にむかってこぼれおり、そのいきおいをましていくのです」とある。わずかその説明は一文なのであるが、これまで以上に水蒸気が雨に変わる様子がイメージしやすい。雲は様々な形を私たちの目の前で展開してくれているが、それはただ形を見せてくれているだけでなく、その形の中で雲自身が何を行っているのかということを教えてくれているのである。実際に、著者は友人に、「人々に雲の新しい見方を提供したいと強く思っています」と手紙に綴っている。

現在の地球の温暖化には様々な要因があり、一口では語れないと私は考えているが、少なからず、体感的には空気が重いと、近年思っている。それは空気が循環されなくなってきているのではないか。それを何とかしようと雲が集結して集中豪雨を起こしているのではないか。この作品を読んでそのようなイメージを抱くようになった。どうすれば、空気が正しい形で循環できるようになるのか。もしかしたら、「雲」がヒントになるのかもしれない。

=======文責 木村綾子