南極と超深海の両極地で、実際に自分の手で水中ロボットを潜らせてきた研究者による「実話」をご紹介するブログ。

 

今回は、「ジンベイザメの住み心地を調べてみる」と、言うお話です。

 

さて、いろんな極地で生物や地質を対象に研究を続ける本研究室ですが、今回は身近な水族館での研究をご紹介します。

 

普段、みなさんが訪れる水族館は、日々、飼育担当が生物を大切に育てており、そのお陰で我々に学びを与えてくれます。

しかし、水族館のお仕事はそれだけではありません。当然、生物が過ごしやすい施設に維持管理するのも重要な仕事。

 

特に、開館から何十年も経つと、いろいろな部分で不具合が出て来ます。

 

それは、私たちが目にする水槽の表側だけでなく、水槽の内部や裏側でも不具合が進行していきます。

 

そうなると、そこにずっと住んでる生物には不快な環境になる可能性があります。

 

そこで。

まもなく開館25周年を迎える「いおワールド・かごしま水族館」で、水槽の健全性を調べる調査を行いました。

↑ オシャレな外観の「いおワールド・かごしま水族館」

 

ここの大水槽では、さまざまな種類の生物が飼育されており、目玉は何と言ってもジンベイザメです。

大きな口につぶらな瞳がカワイイと老若男女問わず大人気(?)のジンベイザメ。

 

この子が果たして今の水槽でストレスなく生活できているのか?を調べます。

 

どうやって?

 

それを考えるのが波海洋工学屋波さんのお仕事キラキラ

 

サメに限らず一般的な魚介類は、人間と同じように色んなセンサーを持っています。

 

しかし、同じ魚種でも、属、類、門などによってセンサーの感度もバラバラです。

 

ある種が不快に感じる場所でも、他の種は何ともないという場合もあります。

 

その中でも、サメは感覚器官の塊のような存在で、遠くで小魚が動いただけでも察知できる能力を持っています。

 

そのため、水槽内の環境変化が彼らのストレスになることもしばしば。

 

例えば、強い照明で照らし続けるたり、エアレーションが老朽化して酸素量が変わったり、小さな変化でもストレスを受け続けると体調にも影響してしまいます。

↑ 水族館のバックヤードにはさまざまな設備が所狭しと並ぶ

 

そこで、生物がどのような環境変化に対して忌避行動や異常行動を起こすのか?を、世界中の論文など調べます。

 

その事例を元に、水族館の飼育担当者や施設担当者と共に、館内の設備や装置などから生物に影響が出そうな場所を絞り込んでいきます。

 

そして、どのような計測をすれば良いか?を検討し、実際に水槽周辺での計測を行います。

 

↑ 結果にバラつきが出ないよう飼育担当者さんと一緒に計測を行う

 

大きな水槽なので、何ヵ所も計測ポイントを決めて、繰り返し計測を行います。

 

しかし、朝、昼、夜で水槽周辺の環境も微妙に異なります。休日の昼間は来館者で賑わいますし、水槽の設備が定期的に動く時間などもあり、計測結果にバラつきが出てしまいます。

 

そのため、計測は必ず飼育担当者さんと一緒に行い、計測中の状況などをメモに記録しておきます。

 

そうすることで、仮に変な数値が記録されていても、ある程度は原因が特定できるようになります。

 

こうして、生物が棲みやすい場所、棲みにくい場所の地図を作ります。この手法をハビタット・マッピングと言います。

そう、南極の湖沼底調査でも行った手法です。

 

 

昨年12月に取得したデータは現在解析中!

大規模な改装や建て替えの際に役立つデータとして使われる予定です!