南極と超深海の両極地で、実際に自分の手で水中ロボットを潜らせてきた研究者による「実話」をご紹介するブログ。

 

今回は、「鹿児島の海に棲む不思議な生物とは?というお話です。

 

このブログでも何度かご紹介している鹿児島の海ですが、桜島桜の浮かぶ錦江湾の深海には、不思議な生物が棲息しています。

 

ある年の8月、我々はそんな錦江湾の調査に向かいまいた。

↑ 海洋調査船「なつしま」で現場に向かいます。

 

生物研究者さんからの依頼で深海探査機で使用する装置の開発を担当し、実際に現場で実験するのが役目です。

 

鹿児島港から調査船「なつしま」に乗り込み、真夏の錦江湾を目指します。

 

↑ だいたいどこからでも桜島が見える

 

錦江湾は1年を通じて波が穏やかなのが特徴で、この日もべた凪。

 

今回はコンテストで入賞した子供たちも特別に乗船し調査の様子を見守ります。

 

↑ 調査に使用する深海探査機(ROV)「ハイパードルフィン」

 

調査は「ハイパードルフィン」と言う水深3000mまで潜水可能な水中ロボットを使用して行います。

 

出港から1時間ほどで現場海域に到着すると、甲板上で慌ただしく潜航準備が始まります。

 

そして、いざ!深海へ!

 

↑ ゆっくりと水面に降ろされる水中ロボット

 

↑ ハイパードルフィンのコントロールルーム内の様子

 

甲板作業と並行して、別の場所にあるコントロールルームでは、パイロットが席に着いてカメラで甲板作業の様子を見守ります。

 

そして、ついに潜航開始。

 

この日は水深100mにある「たぎり」と呼ばれる海底温泉温泉を目指します。

 

桜島は今も噴煙を上げる活火山で、錦江湾は過去の噴火によってできた姶良カルデラでもあります。

 

そのため、桜島だけではなく、海底からも温泉が湧き出しています。今回はその海底温泉の温度を計測しします。

↑ 海底に温度計を突きさして温泉の温度を計測

 

この付近の「たぎり」の温度はそれほど高くありませんが、もっと深海に行くと水圧の関係で水が水蒸気にならず、460℃以上の高温になる熱水噴出孔と呼ばれる場所も存在します。

 

そして、その周囲ではさまざまな物質が高温で溶けだすため、生物も豊富なのが特徴です。

 

↑ 「たぎり」の近くで見付けたカサゴの仲間と思われる魚

 

そして何より、この鹿児島湾には「サツマハオリムシ」と呼ばれる珍しい生物が棲息しています。

 

ムシと言いつつも体は棲管と呼ばれる殻の中に入っていて、普段はエラを管の先から出して海水中から栄養を取り込んでいます。

 

↑ サツマハオリムシ(1本1本、別の個体が集合して生活)

 

サツマハオリムシが取り込む栄養は、人間にとって猛毒の硫化水素で、毒から栄養素を作り出すことのできる、まさに強者です。

 

体内に毒を分解する共生細菌を保有しているため、火山性の湧き水が出る付近に棲息しています。

 

普段は深海の熱水噴出孔の付近で見ることができますが、鹿児島湾は世界で最も浅いハオリムシの棲息地と言われています。

 

そんな珍しいサツマハオリムシを間近で見ることが出来るのが「いおワールド かごしま水族館」です。

 

↑ ジンベイザメにも会える「いおワールド かごしま水族館」

 

今年は残念ながらコロナウイルスの影響で臨時休館を余儀なくされてしまいましたが、世間が落ち着いた際には、ぜひ、貴重な深海生物に会いに行ってみてはいかがでしょうか?

 

来年の夏休みの自由研究はサツマハオリムシがオススメです!