南極と超深海の両極地で、実際に自分の手で水中ロボットを潜らせてきた研究者による「実話」をご紹介するブログ。

 

今回は、「深海生物の素の表情を映し出す装置」についてご紹介します。
 
深海調査と聞くと、カッコいい水中ロボットや有人潜水艇などを思い浮かべる人がほとんどだと思いますが、実は最近の深海調査は動き回らない装置が大活躍しています。
 
その名も「ベイトカメラ」
 
先日発表のあった新種の深海魚「ヨコヅナイワシ」の調査などでも活躍した装置で、深海調査では古くから活用されていました。
 
水中ロボットと違って動き回ることができないなど出来ることが限られることから、あまり日の目を見ずに地味な存在として扱われてきました。
 
しかし!生物学者さんはそこに有用性を見いだしていました。
動き回らないということは音も水流も発生しない!つまり、生物が逃げない!つまり、深海生物の素の表情を映し出せる!
 
こうした観点から、さまざまなベイトカメラの開発に取り組んできました。
 
上矢印こちらは筆者が開発した自律型のベイトカメラで、8000mの水圧でも壊れない構造です。調査が終わると自動で浮上して位置情報を発信してくれます。
 
浮上のパターンも選ぶことができ、タイマー機能で任意の時間に浮上させたり、船から音響信号を発信して浮上させたりすることができます。
 
上矢印こちらは当研究室がNHKと共同開発しているベイトカメラを兼ねた水中環境観測装置で、映像だけでなく水中のあらゆるデータを取得できます。
 
そして!当ブログが初公開キラキラ
この装置で撮影された深海映像がコチラ下矢印
2020年3月に館山湾の沖で撮影された映像です、あごひげをのような感覚器官をピロピロと動かしながら泳ぐ銀色の魚(恐らくギンメダイ)が映し出されています。
 
そして!さらに別角度のカメラにはギンザメが泳ぐ姿も撮影されていました!

 
装置を回収するまで何が映っているか分からないという点では不便に感じることもありますが、何より生物が逃げないというのが、この装置の大きなメリットではないでしょうか!