南極と超深海の両極地で、実際に自分の手で水中ロボットを潜らせてきた研究者による「実話」をご紹介するブログ。

 

今回は、「1/700 地球深部掘削船 ちきゅう を作る!」と、言うお話しです。
 
と、言っても、市販されているプラモデルのお話しではなく、筆者が製作したフルスクラッチ模型のお話しです。
 
記憶をさかのぼること15~6年前。地球深部掘削船「ちきゅう」のお披露目式にて思い立った「作れるんじゃね?」と言うのが全ての始まり。
 
2005年頃からせっせと図面を描いてパーツを切り出しては貼り付ける作業をしました。と、言っても図面なんて関係者でも貰えるわけないので、JAMSTECのパンフレットから縮尺修正をして描きだします。
 
しかし、相手は工場プラントのような配管だらけの船。おまけに市販されているウォーターラインのパーツなんて、使えるのはヘリコプターくらいで他は全て手作りでした。
↑ヘリコプターはピットロードのキットから流用
  救命艇とボートダビットはフルスクラッチ
 
まずは船体の切り出し。と、言っても、本船は船体中央部に「ムーンプール」と言う、掘削パイプを海底に降ろすための穴が開いてるので、実際の造船と同様にブロック工法にて船体を作ります。
 
上部構造物も三面図を描いてプラ材を切り出して「形」にしていきます。本船は大きく分けると、前方、中央、後方に大きな構造物があり、前方と後方はどちらかと言うと箱状なので難しくないのですが、中央部はデリック(やぐら)を載せるドリルデッキと掘削用ドリルを把持するライザーテンショナーなど、複雑な構造物が目白押しです。
 
↑ドリルデッキ(下面)とライザーテンショナー(オレンジの物体)
 
↑ムーンプールから見上げるとライザーテンショナーが見える
 
これらを船体に搭載したら配管や各フロアを結ぶラッタルなどを実船の資料を見ながら「作成」し「取り付け」ていきます。これが気の遠くなる作業アセアセ
 
↑左舷側のドリルデッキ周辺
↑右舷側のドリルデッキ周辺
 
そんな訳で、仕事の片手間に少し作ってはしばらく放置の日々が続き、5年ほどの歳月が経ってようやく完成キラキラキラキラしました。
↑手前が市販キットで奥が筆者作
 
実はバンダイの市販キットとはモデルになった対象年が違うため、若干の相違が見られます。
筆者が作ったのは竣工間もない2005年の姿を再現しており、市販キットは2011年の改修後の姿となっています。救命艇の数と周辺の構造で見分けることが出来ます。
 
↑市販キット(手前)との比較
 
そんな訳で、実はピットロードさんのコンテストでは賞にカスリもしなかったのですが、その後、バンダイさんのキット監修を少しお手伝いさせて頂くなど、良い経験をさせて頂きました。
 
さらに、実はこの1/700「ちきゅう」を作る前に「作れるんじゃね?」と思って作った、もう1隻の「ちきゅう」があります。100円ライターサイズの1/3000で作ったのですが、実はこの1/3000を作ったことで、「1/700で作れるんじゃね?」と思ったのが始まりでした。
↑ 1/3000と1/700の「ちきゅう」と100円硬貨の対比
 
この数年後に南極観測船の中で作ったのが、以前このブログでご紹介した「ダンボール製しらせ」です。
右矢印関連記事
最近はこんな大作を作る時間も気力もなくなり寂しい限りですが、年末年始に何か1隻くらい作りたいと思う2020年の年の瀬です。