南極と超深海の両極地で、実際に自分の手で水中ロボットを潜らせてきた研究者による「実話」をご紹介するブログ。

 

今回は「水中ロボットのコンテスト」がテーマです。

 

陸上のロボットコンテスト(通称:ロボコン)はNHKなどでも取り上げられ、競技人口も多く活発に大会が開催されています。

しかし、海や水中のロボットもコンテストを行っていることは、あまり広く知られていません。

 

 

その理由には、陸上のロボットと違う水中ロボットならではの課題があります。

 

1つ目は競技場所です。水の中を進むロボットには広いプールのような場所が必要です。しかし、機械油が浮くなどの理由からプールを貸し出す機関が少ないことが挙げられます。

 

2つ目は水中の特異な技術をちゃんと教えられる人材が少ないことです。水中機器は陸上や空中のロボットと違い、水密技術が求められます。初めて水中ロボットを触る人にはこの点が大きな課題になり、教科書となる資料もあまり存在しません。仮に接着剤や市販の密閉容器で作ったとしても、それは陸上や空中のロボットから見れば、「ホンモノの技術」ではありません。

 

しかし、日本政府は2030年までに海洋技術者を1万人に増やすと明言しました。つまり、2030年までに即戦力になる人材を育てなくてはなりません。そこで、水産・海洋高校の先生たちが立ち上がりました。

海や船の技術を専門的に学ぶ水産・海洋高校なら、政府の政策に一役買えるのではないかと考えたのです。これまで長年の造船や航海の知識を活かし、「ホンモノの海洋技術を身に着けた人材を世に送り出そう!」と、水産・海洋高校の先生達が全国校長会に提案をしました。

 

そして、まずは水産・海洋高校で機械や技術を専門的に学ぶ「機関科」が中心となり、高校生たちが授業の中で学んだ知識を使って自ら水中ロボットを作り、各高校と技術を競う「マリンロボット・コンテスト」を開催することになりました。

 

 

毎年8月になると全国の水産・海洋高校からの参加者が東京海洋大学に集結。曳航水槽に設置されたコースで1年間の成果を競います。

各校、試行錯誤で組み立てた水中ロボットは、使われている技術もさまざまで、海の技術を専門的に学んだ高校生たちの柔軟なアイディアに溢れています。

 

 

このマリンロボコンでは、自作した水中ロボットの性能を競技だけではなく、技術をアピールするプレゼンテーションとの2つの審査を得て優勝チームを決定します。

審査員は、文部科学省の調査官や海洋開発のプロ、大会の後援である民間企業などさまざまな人が参加し、広い視点から総合的に審査を行います。そのため、日々の勉強が大きく左右します。

 

競技では、昨年の優勝チームを超えるベストタイムを叩きだすチームや、突然のトラブルに涙するチームなど、審査する側にも思わず熱が入ります。

 

 

今年はどこの高校のどんな水中ロボットが優勝するのか!?我々主催者も楽しみなイベントの1つです。今年はコロナウイルスの影響で開催が延期となってしまいましたが、次回の開催に向けて、高校生たちの熱い戦いが続いています。