近年の海洋はさまざまな影響を受け大きく変化しようとしています.その要因は我々の人間活動だけではなく,地球の周期的な運動によるものもあり,すべてを把握し防ぐことはまだまだ難しいのが現状です.

 

そこで,少しでも災害による被害を減らせるように,2018年から鹿児島の水産高校が水中ロボットを使った災害支援対策に取り組んでいます.

これは文部科学省が認定するスーパープロフェッショナルハイスクール(SPH)と言う事業の一環で,公募により選ばれた研究活動に対して3年間でエキスパートを育てるプログラムを構築するのが目的です.

 

鹿児島県枕崎市にある鹿児島水産高校では,災害発生時に必要とされる復旧支援に役立つエキスパートの育成を目指して取り組みを行っています.東京海洋大学(後藤研究室)では,いおワールドかごしま水族館と共に,本校の機関科が取り組む「激甚災害時における港湾内の航路確保」に関するテーマの技術指導をしています.

 

 

高潮や津波,土石流などにより瓦礫が湾内に流れ込んだ際,湾内の航路を確保する「航路啓開」を行うことを目的とした取り組みで,生徒は3年間を通して航路啓開に必要となるソナー(音響測深器)技術や,水中ロボット技術について学びます.

 

 

 

水中ロボットに関する学習では,生徒が自ら水中ロボットを組立・運用・保守することを目的とし,高校生でも取り扱うことのできるロボットを独自開発しています.この中で,「高校生が扱える」と言うのが大きなポイントで,通常,市販されている水中ロボットの多くは専用の部品を使っていたり高度なコンピュータープログラムを使っていたりと,基礎となる技術を学ぶまで時間がかかります.また,専用の部品は入手性にも問題があり,気軽に買えない場合もあります.

そこで,これらを解決するため,高校生が持っている知識をベースとし,通常の水産高校のカリキュラムの中で学べる水中ロボットを当研究室と共に開発してます.

 

 

とは言っても,実際の海洋調査で使えなくては意味がありません.特に,接着剤などで貼り付けた物などは使用を重ねるごとに劣化が進みあっという間に水が入って壊れていまいます.しかし,そこは東京海洋大学の持てる深海調査の技術力を投入し,「ホンモノの海洋技術」を学べる構造で製作を行っています.

 

今年12月には実践を想定した航路啓開の実海域実験を行います.早いものでSPHが始まって既に2年半が経過しました.残り半年で文部科学省の認定は終了しますが,高校生たちの挑戦はまだまだ続きます.水産高校の活躍にご期待ください!