朋子の相手は英島高弘という男らしい。
本人から聞いたのではないそうだが、会った時にこっそり免許証を見たという。
本人は独身だといっているが、朋子は怪しんでいた。
独身ならあまり気にするはずのない人目を極度に避ける。
丈二が尾行したこの日も、列車から降りるなり周囲を気にしていた。
「英島」という名に聞き覚えがあるような気がした。
すぐには思い当たらず、いつも通り「まぁいいか」で済ませた。
英島が駅前に出る前に、丈二は車を用意した。
送迎用駐車場までは朋子のフィットで来たが、自分の営業車もそこに置いてあった。
エスティマでフィットに続いて駅前ロータリーへ。
英島が朋子のフィットに乗り込んだのを確認してから50メートルほど感覚を空けて尾行。
ホテルは朋子が予約してあり、丈二は隣の部屋を取った。
部屋で待っていると、ドアの前を人の気配が通り過ぎ、隣室のドアが開く。
丈二は比較的隣室の音が聞こえやすい浴室から気配を探る。
ドアの閉まる音とほぼ同時に、何かが床に落ちる音。
くぐもった会話が聞こえた。
何を言っているのかまではわからなかったものの、話もそこそこに始まったのがわかった。
朋子のすすり泣くような声が聞こえ始めると、丈二は隣室への関心を失っていた。
室内に常備してあるパソコンでネットに接続し、例のサイトで薫に連絡してみた。
今日は休診のはずだ。
だが、いつもならすぐに返信があるのに、待ち遠しいほどに時間がかかった。
返事があったのは30分後。隣室ではすでに2回戦が始まっていた。
「今、出先です。2時間ほどしたら帰るので、それからでも良ければお願いします」
丈二には時間は充分過ぎるほどにあった。
待っている間、仕方なく隣室に集中することにした。
不意に男の声。
「だ、出すぞ」
感極まった、切羽詰まったような声。
続いて「うっ」という呻き声がして静かになった。
「そういえば…」丈二は朋子に言われていたことを思い出した。
「時間を見計らって、カギを開けておくから、忍び込んでみる?」
朋子はいたずらっぽく笑いながら言っていた。
丈二は部屋を出ると、廊下の人気に気を遣いながら隣室のドアの前へ行き、レバーに手をかけた。
ドアは難なく開いた。ドアロックの受け口の部分にテープが貼ってある。
半ドア状態のためオートロックも役に立たない。
そっと室内に滑り込む。
ちょうど、二人はベランダに出ているようだ。
5階とはいえ、通りからは丸見えなのに、二人とも半裸だ。
朋子が横にいる男の方に顔を向けた時、丈二と目が合った。
朋子が英島の下腹部に手をやる。
2回終わった後だというのに、英島のその部分はすぐに硬度を増す。
隣室のベランダ側の手すりの方に向き直り、後ろ手で朋子が導く。
丈二の位置からも結合部分がはっきりと見えた。
開いたままのベランダの窓から英島と朋子の荒い息遣いが聞こえてくる。
丈二はポケットからデジタルカメラを取り出し、朋子の顔が写らないようなアングルで何枚も撮影した。
「こんな写真、使うような場面はないだろうが、何かの役に立つかもな」
10枚以上撮影したあと、ふと思いついたように、動画も撮影した。
「朋子にも見せてやろうかな」
頬に笑みを浮かべ、狂態の続く部屋を後にした。
※サイドストーリーは↓です。
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