企業戦士の残業
IT系には残業代が支払われない会社が多く存在します。今回は文体を変えてみました。
* * * * * * *
残業が発生する理由はなにか?プロジェクトの不良マネージメント、本人の能力不足、安定しない受注状態から発生する過密スケジュール。一概にこれと特定して指摘できる理由だけではない。
残業に従事した社員が要求できる労働賃金はどれくらいだろうか?
H会社に勤務するK氏(25)は要求したい賃金額に相当する作業量をこなしている自信がある。けれど現在アウトソーシングとして駐留するこのユーザ先のプロパー達は定時枠を無視する傾向が強い。「始業も大体なら、終業定刻も大体なんです。定時枠の概念が希薄だから、帰ろうとすると冷ややかな視線を浴びるのが普通です。しかも時間に関係ないからたまらない。本社からはその分の残業代はでません。」ぼやきながらも、なんとか上層部に進言し、そのユーザとの間に定時枠を意識した契約状態を構築してもらうことができそうだ。「実際にはさほど期待はしていないんですけどね。」と本社自体への信頼が最初からないこともほのめかす。
同じくアウトソーシングの受注企業のY氏(32)は昼食を採りながらのインタビューに「お金はほしいですけれども、その前に残業代を払う気がないなら時間を返してほしいです。」と語る。生まれたばかりの娘と過ごす時間を作れないことは彼女の将来への時間を食いつぶされているのと同じだとも断言した。
しかし、問題があり、この二人に共通しているのはそれぞれが入社時に「定額給(残業代は基本的にない)。」ことを了承している。
F社に駐留するS氏(40)は「嫌なら会社を変わるしかないですよね。でも、会社側としても小額ではあるけれど過度の残業に対する「寸志」の支給はやってくれています。売上状態から考えても限界かも知れないと思うからあまり強くはいえないです。」と会社側に同情を示すように話したものの、「けれど、残業する社員の数が増えると、寸志の額が落ちるんです。払いきれないという理由で。結局、ほとんどの駐留先で残業代を請求できていないのが実情なんでしょうか?どういう契約をしてるんでしょうか?」彼の超過労働賃金を実は請求できなかった。正確には先方にその余力がなかったことが、後からわかった。
S氏はいくら残業しても終わらないプロジェクトをいくつも経験している(アナリストに言わせれば、ろくな評価が下らないだろう)。一度、同様に血眼の部隊と数ヶ月同じフロアにいた。徹夜の数を競ってもおそらくは相打ちとなる。その中で、ある男性がプログラム中、突然悲鳴をあげ、口から泡を吹いて倒れた。しばらく痙攣していたが、救急車で運ばれた。男性がフロアで大の字になり痙攣している間、PM(プロジェクトマネージャ)はその横で冗談を飛ばしていた。このときばかりは周囲のプロパー達も愛想笑いはできなかったようだ。入院先から倒れた男性からの電話に対するPMの受け答えが聞こえた。「明日来れそうか?そうか。じゃ、もし来れそうなら・・・。」これを聞いていたS氏は「虫唾がはしった」と言う。命令されれば具合に関係なく出勤してしまう情けない企業人の性。寝せておいてやれないのか・・・。
ニュートラルで月の労働時間が350を越すぴ某有名企業のプロジェクトがある。ひと吹かしで、400を軽く超えてしまう。従事する人間はおよそ1000人。その7割以上(見た目にはほとんどの人間は顔面を蒼くし、ただ画面に向いている。
働くことに人生のどれくらいを費やしているんだろうか・・・。
企業戦士の武器はわずかに、すり減らす体力と、傷ついていく精神力だけなのかも知れない。
意味ありげに費やされた時間は返らない。でも生きるために働く。
インタビュー中、オフィスから数度、S氏の電話が鳴った。内容はわからないが「切がない」といって彼は無視した。
午前1:00.新たなプロジェクトで夜間自動処理テスト中にできた隙間を縫ってインタビューに答えてくれた彼は、デスクで食べる朝飯と夜食のお菓子を入れたコンビに袋を下げて、オフィスへ戻って行った。
J