ひとりの女を見る
それは私の恋人だった女
ゆれている天秤の上
生きている心臓
新聞売り子の甲高い呼声が
街角をめぐる
とらえることのできなかったもの
世界n個の顔を見る
変色するフィルム
馬を追いかける汽車ぽっぽ
虫ピンでとめられた各種の天使
もちあげられるマティーニのグラス
まわってるレコード
レコードの上にかすかな傷を見る
(『ゆるやかな視線 a portrait』 谷川俊太郎詩選集1)
詩集を買った。谷川俊太郎は最近CMでも読まれたりと注目を浴びているが、透明感がある詩が澄み切った気持ちにさせる。子どもの詩や、少年の詩、大人の詩から、老人の詩へ。根底にあるのは遍く人間への興味とその観察である。夏のテラスで汗をかいたアイスコーヒーの傍に。