去年まで1週間に2~3冊の本を読んでいたのに、今年になってからぷっつりと、止まってしまった。

それは

・お金がなくなったこと

・読書の情熱が失せたこと

・感想や知識を共有・交換する仲間がいない(卒業しちゃったしね)


と色々あるんだろうけど、まぁ、あまり良い傾向ではない。

そんな中、以前買ったままにしていた本を本棚から取り出し、読み始めた。


「そして殺人者は野に放たれる」 日垣隆 新潮社


日本では精神病や覚せい剤の使用により起こした犯罪は「心神喪失」という理由で減刑が処させる。

犯罪はその本人が起こしたのではなく、彼・彼女の病気や薬による幻覚がそうさせたというからだ。

しかし、実際には多くの犯罪者がその法の盾を利用して、厳刑から逃れている。

本書は被害者や犯人の供述をもとにその矛盾を暴くノンフィクションだ。


昔心理学生だった時、精神分析は科学性に乏しいと思い、心の客観的な指標にはならないと、臨床ではなく実験の道を歩みながら、それでも司法の現場における精神鑑定などについてはかなりの信頼性と妥当性が得られていると信じていた。


そうした立場を離れて、精神病・薬物乱用による幻覚の詐病について考えてみる。

犯罪者が逮捕後のことを考えておかしくなったフリをすることは常套手段だろう。

そしてプロの鑑定員ならは詐病はまず見抜く。

にもかかわらず、精神病と認定してしまうのはなんらかの理由がある・・・。


日常の影に存在する事実を綿密に取り上げた一冊。

ただ残念なのは、

◆全体としての文体が稚拙なこと

◆ジャーナリスト特有の文章でプロパガンダを吹聴するような口調で書かれていること

◆メモの走り書きのような文体

という印象受けたことだ。


ハードカバーにはハードカバーなりの文体が必要だろう。

ノンフィクションは事実を述べなくてはならない反面、修飾が難しいのかもしれない。

しかし、かえって内容(事実)と受ける印象が離れすぎないように読むのに苦労する、そんな一冊であった。