半年ほど前から好きになった作家がいる。大崎善生という作家だ。
彼の作品は青年が大人になる過程の葛藤(便利だな、この言葉)を書いたものが多いが、今回読んだ「将棋の子」は「挫折」がテーマだ。
プロの棋士を目指す若者が、しのぎを削る場所、奨励会。満二十六歳の誕生日を含むリーグ終了までに四段にならなくては退会(つまりクビ)という、年齢制限の規定がある。
日々迫る期限の重圧に晒されながら、極限状態で将棋を指す棋士たち。幼少期から将棋のみを頼りに生きてきた彼らの日常は、普通の社会の日常と異なっているのはいうまでもなく、しかし現実には残酷にも、数多くの若い棋士達が花咲かせずして退会を余儀なくされる。将棋以外何も知らない彼らがそこから新たな毎日を歩むことは並大抵のことではない。
新しく別の道に挑むもの、挫折を引きずりつづけるもの、それぞれの人生を暖かく見守った、この一冊。第23回講談社ノンフィクション賞受賞作。気になった方は手にとられてはいかがだろうか。
大崎善生 「将棋の子」 講談社文庫