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FRAGILE Cinema Book Music-朝が来る前に
朝が来る前に(初回生産限定盤)(DVD付)/秦 基博




「朝が来る前に」 作詞・作曲:秦基博 編曲:島田昌典



何が今見えているんだろう それぞれの明日を前に

僕らは空を見上げたまま ずっと何も言えずにいる


突き刺す様な冬の匂い 夢から醒めてくみたいだ

「もう行かなくちゃいけないよ」 そう 胸のフィラメントがつぶやく


止まったままの街 いつもの遊歩道

君がそっと言うよ 「離れたくない」って うん わかってるけど…



朝が来れば僕ら旅立つ 新しい日々の始まりへ

悲しいけど僕は行くよ サヨナラなんだ

ほら 朝がもう そこまで来ているよ



君がくれたこの温もりに このまま触れていたいけれど

もう後戻りはしないよ そう 胸のフィラメントに正直に


滲んでいく昨日 変わり続ける未来

信じているよ 離ればなれでも つながっているんだ



朝が来るその前に行こう 流れる涙 見えないように

悲しいことも連れて行くよ 悲しみがあるから 今の僕ら いるから



朝が来れば僕ら旅立つ 新しい日々の始まりへ

いつかここでまた会えるよね ねぇ そうだろう

朝が来るその前に行こう 流れる涙 見えないように

振り向かないで僕は行くよ 現在(いま)のその先へ旅立とう…


FRAGILE Cinema Book Music-朝が来る前に




「別れ」



ふたりが見ている明日が違うとわかった夜。


苦しくて悲しくて、どこにもやり場もない、そんな、やるせ無い気持ちに襲われた。


どうして変わってしまったんだろう。どこですれ違いはじめたんだろう。


嘘だ。


「わかってたんだ…」

心の声が聞こえた。

僕は、気付かないふりをしてただけだ。


一番近くで君を見ていたから、ささいな変化に敏感で、嫌でも気付いてしまう。


だけど、君が笑えば、気のせいだって自分に言い聞かせていられた。


たとえ、その笑顔が乾いていても…一緒にいたい気持ちが勝っていた。


だけど、もうダメだ。


君が口にした、その言葉は振り払えない。その言葉からは、逃げられない…


その言葉を聞いて、頭の中がまっ白になって、現実感が消えていくようだった。


君が泣きながら口にしているそのあとの言葉は 僕の耳に届いてなかった。


「何か」言っているのはわかる。だけど、「何を」言っているのかはわからない。


長い髪の隙間から見える君の口の動が止まった。

君の口は、泣いているせいか歪んでいる。


あまりにも悲しそうに俯いたまま泣いていた。


自然と僕は君の顔にかかった乱れた髪を耳にかけてやっていた。


君の顔がはっきりと見えた。涙を拭いてやった。


君はさっきよりも激しく泣きじゃくった。


鼻水だって出てる。せっかくの美人が台無しだよ。


僕は泣いていなかった。君のぬくもりに触れたとき、泣きそうになったけど泣いてない。


「わかってたんだ…」

どこからともなく聞こえた僕自身の心の声。


僕は彼女に、胸の奥にしまいこんでいた言葉をたどたどしく口にし始めた。


目隠しをされ、ずっと眠らされていたその言葉は、震えていた。



僕は君の夢を知っていた。

夢じゃなく現実にしようと頑張っている姿を一番近くで見ていた。

誰よりも応援していた。



君の出した答えは、ふたりが見ている明日が違うと僕にわからせるには十分だった。

僕は応援したかった。

泣きたい自分を抑えるような強がりな言葉でそのことを伝えた。



僕らは最後のキスをした。


君の涙の味がした…


そして、強く抱きしめた。

君のぬくもりやにおいが、思い出しきれないほどのたくさんの思い出を連れてきた。

あ、泣きそうだ。


その時、遠くからサイレンの音がして、助かった。


「なんかあったのかな…」と僕。


空は、いつしか明るくなってきていた。



「なんだろうね…」と君。


「もう朝か…」

空を見上げながら、声にはならない声でつぶやいた。


まだ若かった僕らの、新しい日々の始まりの朝だった。