私のように第一シリーズから知っている世代には、金八先生の定年退職には何かこう・・・特別な思いがあるのではないでしょうか?
私が金八先生に出逢ったのは、第一シリーズを放送していた昭和55年。小学六年生でした。
第一シリーズのメインは浅井雪乃(杉田かおるさん)が十五歳で妊娠してしまう・・・という「十五歳の母」のくだり。
当時、思春期の入り口にあった私は、親の居る前でこのドラマを観るのに、ちょっと恥ずかしさを覚えていました。
まだ若かった金八先生、素人の寄せ集めのような生徒たち、第一シリーズは制作側も手探りだったのでは無いかと今になって思い返します。
桜中学の先生方もとても熱い人が多かった。
あの頃は嫌いだったカンカンこと乾先生(森田順平さん)も、まぁイヤなヤツなりに考えて授業をしていたんだなと今なら思うことが出来るのです。
面白い場面も最近のシリーズより断然多かったですよね。
私が一番好きなのが第二シリーズでした。
加藤優(直江喜一さん)のインパクトが強いですが、よく加藤を「腐ったミカンの人」って記憶してる人の言葉を聞くんですよ。
それは間違いです。
加藤優は「腐ったミカンなんかじゃない人」なんです。
ミカンなんかじゃない、人間だ。
教育を受ける権利者だ・・・名言だと思います。
当時十八歳だったという直江喜一さんですが、加藤優も貧乏な母子家庭で中学生ながらアルバイトをして家計を支えていたため、ホントは3Bの仲間よりも一つ年上という設定でした。
加藤に限らず、あの当時の中学生は(本当に中学生の子もいたので)大人っぽかったと思います。
大人の暴力と偏見が加藤という少年の心をねじ曲げ、腐ったミカンとして放り出した・・・その腐ったミカンに「オマエはミカンなんかじゃない、人間だ。教育を受ける権利者だ」と訥々と語って教え込んだのが金八先生でした。
第二シリーズと言えば、加藤を放り出した荒谷二中に加藤と松浦悟(故・沖田浩之さん)が乗り込み、中島みゆきさんの「世情」に乗せて逮捕されて連行されるシーンが有名ですが、私はそこに至るまでの経過をぜひ、多くの人に思い出して欲しいと思いました。
加藤が3Bの中に受け入れられていく様子、犬猿の仲に見えた松浦との友情を育む様子、思いやり溢れる3Bの生徒たち、熱い教師たち。
人の優しさを知った加藤は、自分を放り出した学校で今も虐げられている「腐ったミカン」たちを放っておくことができなかった・・・。
就職も決まっていた・・・みんなに激励もされた・・・お祝いもしてもらった。
一方で卒業式にも出られないかもしれない友達。
加藤は自分だけ穏便に済めばいいとは思えなかったし、自分を放り出した学校側の一部のひどい扱いを受けた教師たちに言葉は悪いけど「オトシマエ」をつけなくちゃ、彼自身の中学生活も追われなかったのです。
加藤は話し合いに行き、松浦はそれを帰って桜中学に報告するための後見人として荒谷二中に出向いたのですが、結果はご存じのとおり。
加藤たち逮捕後の教師、警察、親の話し合いの熱いこと。
こんなに真剣に子供のことを考えてくれる大人が周りに居たら、悪い道に入っていく子なんて居ないんじゃないかと思いました。
私の中では第二シリーズが傑作だと思っています。
その後もいろいろな問題を抱えた3Bの子供たちが登場し、そのたびに真剣に子供たちに向き合って来た金八先生。
もはや金八先生が武田鉄矢さんなのか、鉄矢が金八なのかわからないくらい。(笑)
そこまで演じきれたら、武田さんも悔いは無いでしょう。
さて最後のお話では、ナント男闘呼組の岡本健一さんの息子さんの岡本圭人さんが登場。
景浦裕也という問題を抱えた乱暴な生徒を中心にお話が進み、心臓疾患を抱えた金八先生を元3Bの教え子たちが有形無形の形でサポートしていく・・・というお話でした。
冒頭では金八先生の愛娘・乙女(星野真理さん)が結婚。
スペシャルのときに幼い乙女が瀕死の病気になり、特殊な血液型のために血液が足りないというときに助けてくれた3Bの教え子・岩沼幸一郎も出席。
懐かしい君塚校長(赤木春恵さん)のスピーチで、今は亡き金八先生の妻・里美先生(旧姓・天路)の思い出も語り、私もホロリ。
水谷豊さんと伊藤蘭さんの一人娘・趣里さんもドラマデビュー♪
金八先生が大好きな女子生徒で、「ハッチー、お水飲む?」といつも先生を心配する役でした。
いつの間にか新人俳優(アイドル)の登竜門的な感じにもなってましたが、第一シリーズでデビューした方々が今も活躍されているのを見ると、さもありなんでした。
「景浦は悪ですか?」と問いかける理科室のシーンは良かったですね。
普通の連続ドラマなら、景浦を受け入れる側の葛藤まで描くとこなんでしょうが。
そして最後の卒業式。
謝恩会は歴代の3Bの生徒が集まっての金八先生の卒業式になりました。
残念ながら桜中学が舞台で無かった第三シリーズの生徒は一人も出席していませんでした。
本当はこの三十数年間に教えた生徒は居るはずなんですけど、そこはドラマなので(笑)全部桜中学3年B組出身の卒業生ばかり。
加藤優の存在感はファイナルでも健在でした。
今は一般の方になってますが、直江喜一さんの生き様を知る限り、ああ・・加藤はこんなに良い男、良い大人に成長したのかと彼の人生と加藤を重ねずにはいられませんでした。
同級生に「ハゲでデブ」なんて言われてましたけど(笑)、まんまその通りですけど(爆)、あの頃の加藤優のイメージを崩さずに居てくれている直江さんに改めて感謝しました。
本当なら加藤の隣りに松浦の姿があって欲しかった。
それだけが心残りで残念でした。
きっと加藤と松浦なら、良い友人関係を築いて家族ぐるみの付き合いをしていたかもしれないな~なんて、叶わぬシーンを思い描いてしまいました。
国会議員になって女優を引退した三原じゅん子さんもこの日は出席。
第一シリーズと言えば、たのきんトリオを忘れちゃいけないのに一人も居なくて残念。
浅井雪乃と宮沢保(鶴見辰吾さん)夫妻も揃って出席・・・なのに席は前後。(笑)
この二人のお互いを支え合う純愛も良かったなぁ・・・妊娠の方が印象に残ってしまったけど、雪乃の家庭はひどかった・・・とくに父親。
しまいにはお兄さんも東大受験失敗して自殺。
生まれる命と消える命の両方の命の尊さを訴えた、すごい深い内容だったんだなぁ。
なんと、二人の息子・歩は海外で学生結婚して、今度孫が桜中学に入学するとかって話にはぶっ飛びました。( ̄▽ ̄;)
それでなくても若い両親を、さらに若い祖父母にしちゃったのね・・・と;;
で、十五歳でひ孫を産んだりして。ゞ( ̄∇ ̄;)おいおい
芸能界から離れた教え子たちも集結。
思わず涙を流す人も。
もうこんな風に全員が集まることは無いのかと思うとホント、見ている方まで感無量でした。
まだまだシリーズごとに語りたいことはありますが、尽きないのでこの辺で。(^^ゞ
いろいろ教わったなぁ、金八先生。
なんか私も教え子の一人のような気がします。
やっぱり最後は・・・ありがとう。
そして、さようなら。
