吾輩は風香の左足の薬指である。
 
名前はまだ無い。
 
 
 
今日も風香が吾輩をしげしげと眺めてため息をついていた。
 
長年薬指をやって来て、こうも毎日注目を浴びる日々というのは初めてのことだ。
 
下積み時代の長かった役者がいきなり月9の主役に抜擢された気分だと思う。
 
・・・そんな役者居たっけな?
 
しかし眺めるのは構わないが、風香の顔のどアップは毎日見るものじゃない。
 
美人は三日で飽きると言うが、目の毒は一瞬で効く。
 
風香の顔で瀕死というのは、やはり気分が悪い。
 
どうせなら天海祐希を所望。
 
え?薬指も風香と女の趣味が同じなのかって?
 
美しいものに、オバハンも薬指もあるものか。
 
天海祐希が美しいことに変わりは無いのだ。
 
 
 
吾輩は今日も元気に悪化している。
 
ガーゼを換えても膿みが染み出るので、風香もまた病院か?とか言っていた。
 
勝手に通院をやめたくせによく言うぜ。
 
病院に行くのは勝手だが、完治するのはしばらく勘弁してもらいたい。
 
結構、調子に乗るタイプなのだ。
 
まだ一介の薬指に戻る気は無い。
 
 
ココだけの話だが、つくづく風香はバカだと思う。
 
遙か遠くの風香の頭の中が左足の薬指からも見えてしまうのは、人間的にヤバイと思う。
 
しかしあいつはバカだから、きっと気付かないだろう。
 
あいつは座るとき、癖で必ず左足をケツに敷く。
 
もしくは右膝の下に敷く。
 
どうも正座が好きらしく、コタツに入るとまず正座をする。
 
吾輩が言うのもナンだが、いいのか?と思う。
 
しばらくして足が痺れると足を崩す。
 
足を崩したとき、風香は必ず左足を下に敷いている。
 
右足一家は無傷だというのに、なぜこの期に及んで右足を優遇しているのか、まったく理解が出来ない。
 
末端冷え性の風香の左足一家が一番血行の悪い地域に追いやられているワケだ。
 
そりゃしもやけにもなるし、いつまでも治らないに決まってる。
 
それに気付かない風香は世界一のあんぽんたんだと思う。
 
世の中広しと言えど、左足の薬指にあんぽんたん呼ばわりされているヤツはあまり見かけない。
 
やっぱバカなんだろうな。
 
 
くれぐれも言っておくが、このことは風香には内密に願いたい。
 
もしバラしたら、アナタの足がアンパンマンになるよ。
 
以上、ぶっちゃけ薬指でした。
 
明日は吾輩の好きなミュージシャンについてお話しよう。
 
誰も待ってないけどねっあし