吾輩は風香の左足の薬指である。
 
名前は、まだ無い。
 
明日あたりには決まるんじゃないかとワクワクして待っている。
 
 
皆の衆はご存じだろうか?
 
およその左足の薬指は、全国左足薬指連合会に所属していることを。
 
アナタの薬指も、もちろん会員である。
 
薬指というのは、薬指という何とも意味深な名前でありながら、足の薬指にいたってはまったく存在感が無い。
 
同じ左の薬指でも手の指になると特別な意味を持つというのに、足というだけで見向きもされない。
 
おかしいと思う。
 
親指は親指というだけでデカい。
 
人差し指は中指を触っても人差し指か?と誤解しちゃうほど、なぜか存在感を醸し出す。
 
中指は中指ってだけで真ん中でノッポで威張っている。
 
タンスの端で蹴躓くのは大抵小指の役目だ。
 
足の薬指は地味な存在なのだ。
 
だから全国の左足の薬指は集結したのだ。
 
右足?
 
知らねーよ。
 
勝手に集まってんじゃね?
 
 
で、風香の左足の薬指である吾輩は、この冬スターになった。
 
しもやけの被害に遭ったおかげで、左足趾界の主人公に選ばれたのだ。
 
今まで風香の足で生き続けること四十数年・・・こんなことは初めての経験だ。
 
カンゲキで涙がちょちょギレたあの夜のことを思い出すだけで胸がいっぱいになる。
 
 
風香は、なかなか普通に靴が履けないので迷惑しているようだが、日影の身で生きてきた吾輩の四十数年に比べたら、靴が履けない一冬なんてたかが知れている。
 
もっと痒がって吾輩に爪を立てるが良い。
 
 
問題は、隣の中指の野郎♂が吾輩にライバル意識を燃やしていることだ。
 
張り切っているのはわかるが、この冬のヒーローの座は譲れねぇ。
 
すっこんでろ!!と毎日威嚇している次第である。
 
 
くれぐれもこのことは風香には内密に願いたい。
 
あの野郎♂・・・いや、お姉さん(おえ~~~っ!)じゃなくてオバハン(どうでもいいのだが)には、まだ吾輩が実は男だと知られたくないのだ。
 
約束を破ると、アナタの薬指が性転換しちゃうよ。
 
以上、薬指のひとりごとでした。
 
明日は、吾輩の今の状態をお聞かせしよう。
 
誰も待ってないけどねっあし