二十年前、一人の少女が学校の帰りに何者かに襲われ、無惨にも殺されてしまった。
 
当時の担任教師・藤崎敏子は、事件がトラウマとなり、教職を退き、家庭を持っても我が子のことが心配でならない。
 
娘が少しでも帰りが遅いと心配で居ても立ってもいられなくなり、通学路と違う道を通ったと聞くと異常なほど娘に注意してしまう。
 
それだけ一人の子供に心を砕くあまり、二人目三人目の子供を産むことすらできなかった。
 
娘は今、二十年前に少女が殺された小学四年生になっていた。
 
 
少女の同級生・郷田亮二は、密かに少女に思いを寄せていた。
 
隣の席で、消しゴムを貸してくれたりする彼女が、その日は調理実習のときにエプロンのヒモを結び直してくれた。
 
照れくさく、恥ずかしかった。
 
そのせいかもしれない・・・彼は、通学路ではない方向に行こうとする少女に「家、そっちじゃないよな」と言えなかった。
 
そして亮二は生きている少女を見た、最後の人物になってしまった。
 
 
事件は何の手がかりも掴めぬまま時効を迎えた。
 
医師になっていた亮二は何かに突き動かされるように、医師を辞め刑事になった。
 
折良く、当時の四年三組の二十年目の同級会が開かれることになった。
 
そこに・・・あの日殺されたはずの葛城佐智絵が現れたのだった・・・
 
 
この本はミステリーだけど、「自分の人生を生きる」というメッセージを強く感じました。
 
亡くなった兄の代わりに医師になった亮二、亡くなった佐智絵の代わりに佐智絵の人生を生きる娘。
 
亡くした娘の影を別の娘に重ねてしまう母、過去の傷から立ち直れない元教師。
 
そして何らかの形で事件の影響を受けている同級生たち。
 
 
子供が殺される・・・というお話はイヤですが、なかなか面白い一冊でした。
 
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