「紅雲町のお草」 「クワバラ、クワバラ」 「0と1の間」 「悪い男」 「萩を揺らす雨」の五編。
 
紅雲町で「小蔵屋(こくらや)」を営む、杉浦草(そう)は数えで七十六歳になる。
 
若い頃、結婚していたが、婚家に幼い子供を残して離婚。
 
その後、息子が三歳のときに用水路で事故死した過去を持つ草は、毎日近くの観音様にお参りするのを日課にしている。
 
小蔵屋は、和食器とコーヒー豆を商っている草の店である。
 
コーヒーの試飲目的に多くの客が出入りして、常連もいる。
 
そんな草を主人公に、五つのストーリーが展開していく。
 
 
最初は草が探偵のようなことをして事件を解決していくような物語なのかと思ったが、そうではなかった。
 
ヒロインは老人だけど、とてもチャーミングな女性で、行動的。
 
優しさもあれば機転も利く。
 
パソコンだって習っちゃう。
 
仲の良い友人が身体が不自由になれば、食事も届けたりと世話も焼く。
 
しかし彼女の存在が草にとっても支えであるため、彼女・由紀乃が息子に引き取られていくときの寂しさは言いようの無いものがあるが、引き留めることもできない。
 
人知れず恋した男のために、一肌脱いで彼の役に立とうとする健気さもある。
 
近くに小蔵屋があったら、私は毎日通ってしまいそうだ。
 
試飲だけだと申し訳ないので、ときどき買わなくちゃね。(^^ゞ
 
イメージ 1