「蝶のかたみ」 「バスタオル」の二編。
 
どちらもホモセクシャルの男性が主人公のお話でした。
 
 
「蝶のかたみ」は、戦争が終わって二年目、主人公の次郎が十七歳、弟の昭次郎が十五歳のときに次郎は異様な光景を目にします。
 
近所の割烹の店の青年の婚礼が行われていました・・・しかし、そのとき花嫁姿で周囲の人々に囃し立てられていたのは、弟の昭次郎だったのです。
 
熊本のある一帯は、男性の同性愛者が多く居たことがあったそうです。
 
次郎自身、自分もホモであるという自覚はあるものの、そういう部分を前面に出すことに羞恥心を持っていたので、弟のそういう行為は恥ずべきことであったのです。
 
次郎は東京の大学を出て、教師になって地元に帰って来ます。
 
一方、弟の昭次郎は、男性でありながら女のような衣装に身を包み、踊りを踊ったり、巧みな話術で世を渡り歩き、常に派手な生き方をしていたのです。
 
次郎の家庭は複雑で、姉と妹、そして昭次郎、それぞれ父親の違うきょうだいでした。
 
次郎の父親は刑事であったということが、次郎にとっては誇りになったのですが、昭次郎にとって兄と父親が違うということは、とても大きなことでした。
 
上手に世渡りをして、常に派手な生活をし、片意地を張り続けた昭次郎。
 
しかし彼の人生が残したものは・・・。
 
 
この本を手に取ったとき、その表紙を見て何か異様な雰囲気を感じました。
 
黒い地の着物、美しい藍や白銀の天の川のような色合いの上に金や銀の蝶が飛んでいます。
 
女性が着るには少し派手。
 
男性が着るにも・・・うう~んというような着物が無造作にハンガーにでも掛けているような写真が表紙を飾っているのです。
 
内容もショッキングでしたが、昭次郎の生い立ちを知るにつけ、彼の人生の哀れさが伝わってきて、後半にかけては胸が痛くなるようでした。
 
「バスタオル」は、ラストでちょっとオエッと来ました。(^^;)
 
ごめんなさい。<(_ _)>
 
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