しずかは、勤めていた会社が倒産してプー太郎になってしまった。
ここぞとばかりにお見合いを勧める母。
初めてのお見合いは、母の友人が三十四歳の小村さんという男性を紹介してくれた。
母とおばさんだけが盛り上がっている中、気まずかったものの、二人きりになると居心地の良い小村。
数回会って、しずかの心が少しずつ彼に傾き始めたとき、突然訪れた小村との永遠の別れ。
幼い頃から美人で出来の良い姉と比べられ続けたしずかだったが、嫁いだ姉の家を訪ねて奇妙な気持ちになる。
美しすぎる、豪華すぎる、そして広すぎる家にポツンと一人でいる姉は、どこまでも美しく、家中にブランドものが溢れ、何一つ不自由の無い暮らしを物語っているのに、姉の顔から生気が消えているのだった。
小村との出会いからしばらくして、しずかはロシアン・ハウスで住み込みで老女の相手をしてくれる人を募集している横浜の物件を見つける。
小村が「やらないよりやった方がいい」とアドバイスしてくれたのを思い出し、ロシアン・ハウスを訪ねたしずかは、そこに住むことに決める。
ターニャという洗礼名をもつ日本人の老女とアレクサンダーという長男が暮らす瀬能府家では、海外勤務になったアレクサンダーの留守中に母と一緒に住み、週に一、二度の買い物をしてくれるように頼まれる。
ターニャは老女とはいえ、しっかりしていて朝のひとときをとても大切に過ごす女性で、人をけしてイヤな気持ちにさせない不思議な魅力を持っていた。
やがてターニャの亡夫・ニコライの十五回忌の法要が行われるが、賑やかなことの好きだったニコライのため、仮面パーティーを開くことになる。
ターニャのもとで少しずつ変化していくしずか。
そして、しずかはそこに姉を招く。
姉・恭子もターニャのもとで生気を失っていた顔に笑顔が戻り、元気になっていくのだった。
宗教の違いもあるのでしょうが、亡夫の十五回忌を賑やかに過ごし、故人の好きだった料理を並べ、彼の愛した人々が集う、形式ばかりにとらわれず、最も理想的な形の法要のあり方のように思えました。
ターニャのような女性と出会ったことで、しずかの人生観も大きく変化したことでしょう。
読了後に「幸せの本質」について考えてしまいました。
