何年か前に、玉木宏さん主演でドラマ化されていたと思います。
 
私はドラマをほぼ観ていなかったので、まっさらな状態で読むことができました。
 
これは面白い作品です。
 
 
少し神経衰弱なきらいのある主人公は大学院の研究室にいたが、教授から奈良の高校で二学期の間だけ常勤講師として働いてみないかと持ちかけられる。
 
奈良女学館に赴任して、いきなり遅刻して来た生徒、堀田イトに「マイシカを駅前に停めていたら駐禁をとられたので」などと言われ、他の生徒の前でからかわれてしまう。
 
奈良の人間は皆、鹿に乗るから「マイシカ」を持っているのだなどと、まことしやかにさらりと言うのである。
 
堀田とは、その一件以来わだかまりが出来てしまう。
 
奈良女学館には、京都と大坂に姉妹校があり、毎年三校対抗のオリンピックともいえる「大和杯」というのが開催される。
 
主人公は、わずかな経験しか無いにも関わらず剣道部の顧問になる。
 
今年は奈良女学館で開催されることになっている。
 
部員は三人。
 
五人制の剣道の試合に二人足りない。
 
一人は引退した三年生が加わるものの、それでも一人足りない。
 
そんなある日、思いがけず主人公は奈良公園の鹿に話しかけられる。
 
大和杯に勝って、優勝盾のことらしい「サンカク」を必ず獲れと言うのだ。
 
サンカクを用いて、ある儀式を行わないと地底のなまずが大暴れして大地震が起こるという。
 
なんの冗談かと最初は自分の神経衰弱を疑うも、だんだんそれは現実味を帯びてきて、鏡に映る彼の顔は鹿化していくのである。
 
大和杯直前になぜか剣道部に入部してきた堀田と共に、「サンカク奪回」を目指して剣道部は大活躍する。
 
 
 
とにかく文章表現が面白く、最後の最後までワクワク感を持ったまま読み終えることの出来る一冊です。
 
奈良の歴史や芭蕉の句、鹿島大明神や春日大社の役割などを上手に織り交ぜながら、ポッキーが好きな雌鹿なのにオッサンの声で喋る鹿や、歴史について主人公にたくさん情報を提供してくれる藤原くん、野性的魚顔の個性的だけど可愛らしさも併せ持つ堀田イトやリチャードと呼ばれる教頭先生など、登場人物もそれぞれ楽しい。
 
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