「返事はいらない」 「ドルネシアにようこそ」 「言わずにおいて」 「聞こえていますか」 「裏切らないで」 「私はついてない」のサスペンスタッチの短編六本。
「私はついてない」が面白かったので、ご紹介します。
「僕」のもとに突然現れた、従姉の逸美姉さん。
彼女は、とんだ難題を抱えてやって来た。
婚約者に貰ったばかりの指輪を会社の先輩に借金の担保に取られてしまったと言うのだ。
婚約者の恩師に明日会うというのに、指輪が無いでは話にならない。
叔父・叔母を頼ってやって来たものの、「僕」の両親は結婚記念日で一泊旅行に出掛けていた。
なんの借金かと思えば、競馬にのめり込んでのことだと言う。
知らなかった訳ではないが、彼女の「凶人のように楽観的」な性格に「僕」は呆れながらも、急場しのぎに母の大切にしているダイヤの指輪を貸すことにした。
ところが、その大切な指輪も籠抜け詐欺に遭い、盗られてしまう。
彼女へのプレゼントのために、たくさん嗅いだ香水の匂いが手がかりになり、事件が片付いたとき、もう一つとんでもない事実が明かされる。
これはもう逸美姉さんのキャラがおかしくてたまらない。
とても深刻な事態なのに深刻さが無いのだ。
こういう女性にギャフンと言わせるのは、なかなか大変。
反省しても、すぐまた同じことをしでかすから。(笑)
この先も「僕」は逸美姉さんに振り回されるのだろうと思うと笑えてくる。
