「岡安家の犬」 「静かな木」 「偉丈夫」の短編三本。
 
藤沢作品は情緒豊かな作風がとても好きで、若い頃よく読んだものです。
 
 
犬好きな岡安家の人々は、アカという赤犬を飼っていて「その可愛がりようは尋常ではない」という。
 
家族は、当主・甚之丞が近習組に勤めて百十石を頂く家柄で、祖父の十左衛門の他には母と妹二人という五人。
 
甚之丞は二十二だが、まだ独身である。
 
ある日、妹の許婚者であり、甚之丞の親友でもある野地金之助から犬鍋をやるからと招待されて出かけていった甚之丞は、そこで思いもよらぬ友の裏切りに遭ってしまうのだ。
 
飼い犬は一家にとっては家族の一員だ。
 
たとえ金之助が別の犬を連れて来ようとも、アカの代わりなど他に居るはずもない。
 
どんなに家柄、人物ともに優れていようとも、親友の家の飼い犬を煮て食べるような人間とは金輪際関わりを持ちたいとは、私でも思わないだろう。
 
浅はかないたずら心から親友を失った金之助は愚かだとしか言いようがない。
 
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