宇津木明生は名家の三男だ。
 
兄の宣生や靖生のような才覚は無く、劣等感と悔しさ、無念さ、我が身の不甲斐なさを嘆いていた。
 
明生は宇津木家の系列の会社には属さず、一般企業に就職した。
 
一般企業とは言ってもYAMATOは歴とした一流企業だ。
 
就職して三年目の春に、柴本なずなと知り合い、結婚した。
 
明生には幼少期から決められた婚約者がいた。
 
老舗の文具よ輸入業務店の娘・山内渚だが、渚はどうも次兄の靖生に思いを寄せているらしい。
 
しかし靖生は兄嫁の麻里を思っていた。
 
妻のなずなも、幼なじみの真一とかつて恋仲だったのだが、彼が小春という女との間に子供ができたことで結婚してしまい、終わったかに思えていたのだが、真一と小春が離婚したと聞くと、なずなは矢も楯もたまらず明生に離婚を申し出る。
 
こんな風に人物相関らしきことを書いてみると、あるがちな感じもするが、内容はかなり混み入っている。
 
人の思いというのは、どうしてこうも複雑に絡み合い、思い通りに上手くいかないものだろうか。
 
傷つけ合わなければ、心に傷を持ち、痛みを伴わなければ、幸せにはなれないのだろうか。
 
私はこの物語の中では唯一、明生の女性の上司・東海さんの存在に救われる。
 
どうも見た目が美しくないということらしいが、他の女性キャラクターより一番魅力的で私は彼女の人柄がとても好きだ。
 
 
これともう一編『かけがえのない人へ』という作品もあったが、こちらのヒロイン・みはるという女性は、同性ながら理解に苦しむ行動を取るので、あまり好きな作品ではありませんでした。
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