本所深川一帯を預かる「回向院の旦那」こと、岡っ引きの茂七が、次々と難しい事件を解決していく捕り物ばなし。
 
「お勢殺し」 「白魚の目」 「鰹千両」 「太郎柿次郎柿」 「凍る月」 「遺恨の桜」 「糸吉の恋」の七編。
 
このお話は平成十三年にHNKの金曜時代劇になったのに合わせて、愛蔵版の刊行となったらしく、それに合わせて「糸吉の恋」を追加したそうです。
 
私は未読ですが、茂七親分を主人公にした作品には「本所深川ふしぎ草紙」や「幻色江戸ごよみ」という作品があるそうで、この「初ものがたり」がとても面白かったので、そちらも機会があれば是非読んでみたいと思いました。
 
どの話も面白かったのですが、私は日道という少年のお話が心に残りました。
 
日道は本名を長助という、年端もいかない子供ですが、わずかばかり霊感があるのです。
 
それをいいことに長助の親が子供を「日道さま」と白装束まで着せて神のごとく奉り、失せものから人探し、除霊など、あらゆることをやっては法外な賃を取り、儲けていたのでした。
 
茂七は、この子供に良い感情を持てず、また子供にこのような振る舞いをさせる両親に憤りを感じていました。
 
長助にわかるのは実はほんの少し。
 
でも噂を聞きつけた人々が押し寄せます。
 
欲に駆られた父親は、過去に下っ引きをしていた経験を活かし、先に調べておいたことを子供に語らせるようなマネをしていたのでした。
 
別々の店を持つ兄弟が、お互いに先方が潰れるようにと日道に頼みに行けば、両方から礼金を貰い、片方が潰れたら更に礼金をふんだくるのです。。
 
外れてしまった片方の店は苦情を言うが、知らん顔で通します。
 
子供を使っての私利私欲にまみれた悪事。
 
お上は裁けないが、茂七は苦々しく思っています。
 
そんな折り、日道が何者かに襲われ、親の目の前でかろうじて命を取り留めるだけの大けがを負わされてしまいます。
 
茂七に会った日道・・いや長助は、胸の内の苦しさを吐露するのでした。
 
日道の霊感は、このあとの「糸吉の恋」で本領発揮します。
 
その物語のヒロイン・おときという娘もまた哀れで心に残りました。
 
それにしても、元武士らしきやたら料理上手な稲荷寿司屋は一体何者!?
 
この人に語られている本を探さなければっ!!!
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