三沢光司は、恋人の久保井麻由子が何者かの襲われ、惨殺されてしまった。
 
それから光司の身辺は一変してしまった。
 
連日のようにマスメディアが麻由子の事件を取り上げ、光司が麻由子のストーカーで、あたかも犯人であるかのような扱いを受けるようになってしまった。
 
顔にはモザイクがかけられ、音声も変えてはいるが、報道に都合の良い部分ばかりが取り上げられ、何度も繰り返し流れた。
 
近所の人は光司だとすぐにわかったし、彼の実家にまで被害は及んだ。
 
 
口べたで、対人恐怖症の三枝ひとみは通販でスタンガンとアメリカ製のアイスタガーを護身用に買った。
 
ひとみは福岡でデリバリー・ヘルスのクラブで働いている。
 
愛想が無く、他のデリヘル嬢たちとも上手くやっていけてはいない。
 
そんなひとみの客として出会ったのが、光司だった。
 
光司を殺人犯と思い込んだひとみは、殺されると思い、彼の膝をナイフで刺してしまう。
 
 
それから三年後、思いがけない場所で再会した二人は・・・・。
 
 
この小説を読んでいて、マスコミって怖いなとつくづく思いました。
 
三沢光司は、たまたま無職ではあったけれど、もしも会社に勤めていたら解雇もしくは自主退職せざると得ない状況だったでしょう。
 
恋人を失った上にその犯人のように扱われ、彼女の家族に恨まれ、世間の冷たい目に晒され、家族にまで「早く自主しろ」とまで言われてしまい、人生を大きく狂わされてしまったのに、マスコミは謝罪などしないし、彼をさんざん傷つけた人たちの記憶から、そんな過去は消えて行く。
 
あまりにも理不尽で苛立ちを感じました。
 
不器用過ぎる二人の切ない「その後」に注目!・・・思わず幸せを願わずにいられない作品です。